第106期 #6
私は「学習に於ける罰の効果」を測る実験、とかいうアルバイトに募集し、見事、選ばれた。時給が高かったから、相当な倍率だっただろう。
実験の内容はこうだ。先ず、アルバイトがくじ引きで、教師役と生徒役に分かれる。教師役は、生徒役に記憶に関する課題を出し、生徒役が間違えると、電気ショックで罰を与える。間違える度に、電圧を上げて行く。
これで何が分かるのかは知らないが、とりあえず教師役の方が嬉しい。
私は、教師役になった。
私は、何やら機械の置かれた部屋に通された。その機械には、45Vから、15V刻みで電圧の書かれたボタンがあった。
なるほど、15Vずつ強くしていくわけか。だが、所々「非常に強い」、とか「危険」とか書いてあるが、大丈夫なのか。
45Vがどんなもんか試してみましょう、などと白衣を着た博士に言われ、電流が流される。痛いが、まぁ、こんなものか。
教師役で良かった。
どうやら、生徒役は、壁を隔てた隣の部屋に居るらしい。マイクとスピーカーで繋がっているようだ。
さっきの博士は、私の後ろに座っている。
実験が始まる。
いきなり間違える。私は、45Vを押した。スピーカーから「イタッ」という声が聞こえる。
実験は進む。
75V。大分、不快になってきたようだ。
120V。大声で苦痛を訴えてきた。
私は、申し訳なく思いつつも、内心、痛い思いをしてるって事は、あっちのが給料高いんだろうな、なんて考えていた。
135V。それは、うめき声だった。
この実験、意味があるのか。博士にそう聞いたが超然と、続行して下さい、と言われた。
150V。悲鳴か絶叫か。
だが、痛いからって止めてしまっては、貰える額も減るというものだ。
180V。痛い、耐えられない、という。
何だ。さっきまで絶叫していた癖に。
270V。金切り声というのは、こういうのを言うのだろう。
流石に心配になってきた。だが博士は、あなたに続行して貰わねば、と言う。そうか、私も実験対象だったよね。
300V。壁を叩いてきた。実験を中止してくれ、と。
博士は、続行して下さい、と言う。
315V。壁を猛烈に叩き、実験を降りる、とか叫んでいる。
博士に、ああ言ってますから、と言うが、迷う事はありません、だそうだ。
330V。さっきまであんなにうるさかったのに、無反応だ。
375V。危険と書いてあるが、無反応だ。
450V。最後のボタン。無反応。
博士曰く、死にましたね。
まさか、私のせいじゃないよね?