第104期 #16
怒涛の音楽。宇宙オーケストラにも様々あるものでベテルギウスの真空。耳を澄まそう。何故だろう。バイオリン。ビオラ。ティンパニ。コントラバス。ハープ。偶然なんだろう。たった七色のリボンの束の縛られたきっと偶然なのだろう。上も下も横も隣も無い。ビートルジュース。上も下も横も、あなたの隣。
マネキンの頭に、近くからひきずってきた理髪店のくるくるを突き立ててみる。
「これで動けばとっても助かるんだけれどなあ!」
マエストロのソフトウェアはずっと進化し続けているけれど新機能も増え続けているけれどバグも増え続けているので処理速度、きちんとマネキンもくるくるも新しくしているのにXPの時のほうが絶対に軽快だったよなあ、とか思っても新機能。だいたいもはや指揮者が立ち上がるのは運なのか不運なのかというような運不運に、いやでも運不運ってってびぎびぎばぎぎぎぎ! 立ち上がった! がぎびぎぎぎ! 立ち上がった! くるくるが十二本突き立ったマネキンが、ナイチンゲールが、マエストロが、宇宙オーケストラの前に指揮棒を高く構えて立ち上がる。
良かった。なんとか助かった。息をするのも苦しいような緊張。
「みなさぁーんのー、みみのあなのなかにー、クラシックの名曲がいまー、流れ込んでいきます。拍手をたくさん、ごろうじろー」
マネキンマエストロの口上が響く。3200K、地球大気密度比、4500分の1。ひとつ、おおきく、ミミは息を吸い込む。なにしろここのストリート公演でおひねりがきちんと来ないと、マエストロや機材や宇宙船を休ませるために、ミミとシスター達がまたストリートでフェラチオをしなければならないからな。
フェラチオー、フェラチオいかがっすかー。街頭に立って、バイオリンの弓を大きく振りまくってジャンプして、客を呼び込まなければならないからな。ブラジャー、パンツ、陰毛、エレクトリックバイブレーターが夜空を舞う中で、セックスアピールをして良い条件でフェラチオをするようにしなければならなくなるからな。もうバイオリンよりもフェラチオがうまくなってしまったからな。処女なのによく解らないサービスとか展開とかでもう童貞でも無いしな。音楽とか美術とかつまりアートとかで表現したかったものよりも多くのものを、もう違うことで表現してしまっているからな。
「美術とか音楽とかアートとかブンガクとか、そういうもので表現したかったのにな!」