第104期 #15

悩み

 5時までやってるそうゆうお店でだらだらしたあと裸の店長にエレベーターまで見送られて駅前のマクドナルドでホステスさんと待ち合わせたあと、一緒にガストに入って7時まで朝ごはん食べた。人や資本や権利を喰わない分だけ食欲がある私はずいぶんと平和だと思う。

 23歳のホステスの女の子のさいきん昼間の仕事を辞めたという女の子の悩みは不定形で不定形過ぎてそもそも悩みは不定形だけども、彼女の知る限りでは言葉にも定着できないようで私が「悩みはあるの?」と訊けば「よく分からないよ」と答えるのだった。好きだという感情は単に付き合ってくれるから、時間を過ごしてくれるから、というたったそれだけかもしれない誤解で生じてしまうのかもしれない私にとっては。そもそも悩みなんて訊く必要もないけれど、訊いてしまったのは彼女のことが好きだからなんだろうけど、それは肉欲からなのか、それともただ単に会社の近くに住んでいるから同棲すれば非常に利便性が高いということからなのか、結局結婚とかもそういう実利に基づいてるもんだと思うし、生活の隙間を埋めるような行為としての恋愛が事実上の定義なんじゃないのだろうか。とにかくセックスしてみれば一緒に生活してみれば分かるよ。

 悩みという題目で書こうとして題目から脱線してしまうのが雑記なんだろうけれど、そもそも半年で百回は振ってしまえるような相手に本心なんか到底言わないだろうし、ほいほい朝からお尻さわっちゃうような男なんてそもそもお客さんとなんか付き合わないよなんていう輪郭はさておいて、だいたい数えきれないほど告白していて、実際数えてみたら10回くらいしか告白してないかもしれないけども、さりとて数えきれないはもう百回と同じなんだよなとか思う。彼女は、私にほんとうのことを答えたくないから「分からない」と答えたのかもしれない。

 いやそう言えば答えていたな。「何もしたいことがない」が悩みだった。「だけど悩んでも仕方ないから前に進むしかない」。付け加えていた。通り一遍の回答には何も信じうるところがなくて、何一つ考えているようには感じられないけど、悩むという行為自体がそうゆう一組になって受け入れられているならば、それを瓦解させるのが私の年上の役割だとして、自分の都合のいい好意の代替神話だと思い込む。さりとてほんとうのことを言わないというのは私に対する彼女の斥力なのかもしれないんだけども。



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