第104期 #14
ケータイに着信。非通知からである。
どうせイタズラだろうとは思ったが、なかなか鳴り止まないので、仕方なくちょうど山場だったゲームをポーズして出た。
「はい」
「あたし、メリーさん。今、あなたの家の前にいるの」
「……はい?」
切れた。女の声だった。
二階の自分の部屋の窓から外を窺うと、庭先に親のではないチャリが止まっていた。マジで誰かいるらしい。
たぶん同い年くらいの女子の声だったと思う。だが、別に女友達がいないわけではないものの、さすがに家まで訪ねてくるやつに心当たりはない。
一応、足音を立てないように階段を降りて、とりあえず玄関のドアにチェーンをかける。
スー、ハー。深呼吸を一つ。鍵を外し、慎重に扉を開けると────
そこには、隣町に住んでいる4つ年下の従妹が立っていた。正月に会った時より髪が伸びて、だいぶ雰囲気も大人びていた。
「どーも。メリーです」
「…………あがって麦茶でも飲んでけ」
──ちなみに、要件は
『ばあちゃんがきんぴら作りすぎちゃったから、にぃちゃんのトコにもおすそわけ〜』だった。
満面の笑みでタッパーを渡された。
さすが我が故郷。田舎である。何かに期待した俺がバカだった。