第103期 #7
あの頃、私はあなたへ逢いに行くため、毎月ひかりへ飛ぶように乗車しました。
仕事が多忙を極め、格安チケットを買いたかったのですが、時間も無く、窓口で時計と睨めっこしながら券を買っていました。
運動をしない私に、あなたに逢いに行くという気持ちが、階段を駆け上がらせていました。
息つく間もなく、ホームに入ってくる白い車体に、あなたを抱きしめるかのような気持ちになったのを今も忘れてません。
今、ベビーカーに乗ったあなたによく似た赤ちゃんがスヤスヤ寝息を立て始めました。
私の横でその子をあなたは優しい眼差で見つめています。外を猛スピードで走る白い車体の中、微かな揺れに導かれるように瞼を落とし始めたあなた。
車窓越しにあなたを眺める日が来るとは、あの頃の一人で眺めてた景色とは変わりました。