第102期 #4

短編

短編、というサイトがあります。

私は、そうですね、もう何年も前になりますが、4年か5年ぐらいかな、このサイトに投稿していた事があります。
ほんの、4作品で、どれも予選落ちでしたけど。

このサイトは、千字以内の短編小説専門の投稿サイトです。
私、投稿しなくなって随分経ちますけども、今でも、ふとした時に、例えば通勤中や帰宅中に、小説を思い付く事があるのです。

そう、例えば、井の中のカワグツであるとか、社会風刺的な発展が可能に思われる題を、良く思い付きます。
そして、その場で、携帯電話のメール機能を立ち上げ、宛先を家のパソコンにして、思い付いた内容を打ち込み、送信しておくのです。

大抵の場合、帰宅して、いろいろと済ませまして、さあ寝ましょうか、という時に、思い出します。
そうだ、短編に投稿する小説を思い付いたのだった、と、そこで思い出すのです。

書いてみます。思い付くままに書いていきます。
字数とか、細かい事は考えずに、兎にも角にも、書いていくのです。
勿論、書くと言っても、パソコンのワープロ機能なわけですから、打ち込んでいく、が正しい表現なのですが。

いつも、何故でしょう、書き終わらない。
メールを打ったその時に、思い付く限りの概要を送信しているというのに。

そんな事を繰り返して、早、幾年月。
ネタが切れる事もなし、しかし、書き終わる事もなし。

小一時間など、すぐに過ぎてしまいます。
打つ手がない、とは正にこの事。打つ手が止まって、数十分。
打っていたのは、最初の五分。

私は決して、起承転結に拘っているわけではありません。決して、拘る事が悪い事ではありませんが、千字しかないですし、字数の制限以外は、何の条件もないのですから、自由に書くべきなのです。

そして、ある時、ふと思い付きました。
短編に投稿したいのに、書けない。これは小説になるのではないだろうか、と。
いや、それはもう、予感などという生温いものではありませんでした。稲妻のごとき確信でした。
家に帰った私は、いろいろと済ますのは後にして、パソコンに向かいました。

書き始めると、いつもと同じ、最初の五分は、書ける書ける。あっと言う間に、五百字を越え、八百字を越え、もう千字になろうか。

その時思った、書いているのは、まさに今の事。ならば、結末が無い。あるはずがない。
結末は、未決定なのであると。

そう、起承転結の、結は書きようがないのです。

だって、今は未だ、転なのだから。



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