第102期 #13

さぁ、はじまるぞ!

桜の花が散っている。春の風が遠慮なく吹き抜ける。高校の卒業式。

泣いていた女の娘ももう笑っている。

これからどこへ行くか? そぞろあるきで、なんとなく歩き出す。

先生をかこんで謝恩会の予定がある。


栄太は胸を張って歩き出した。タツヤがくる。


「おぉ〜 プロテストがんばれよ! おまえ、いつでも半端なんだよ。遼はマスターズ優勝だぜ!! 高

校さえパスして、マスターズだぜ!」

まだ、優勝していない。そういいながら、ものすごくみっともないと、感じてしまう栄太。

「おれが、ゴルフの火をつけちまったようなもんだから、がっぱがっぱ稼いでくれよ。そうでないとオレ

も責任感じるからよぉ〜」

タツヤに激励されるのも、いやな感じ。

大学は受かってるんだ。行く気になればいまからでも入学できる。ただ、行かないことに決めたんだ。
栄太は気負いこんでいった。

「ああ、そうだよなぁ、おれに相談もなく。かってにプロになるときたよ。びっくりだぁ」

「ゴルフがおもしろいんだよ」

そういうしかなかった。

なぜ、こんな冒険をできるのか? 栄太も不安がある。

それでも、楽しいのだ。だから、ゴルフを続けたい。大学にいってゴルフを続ける道もあるのはわかって

いる。でも、まず何より先に、プロテストを受けて合格したい。だめなら、大学にいくこともできる。

うしろから襟首を引っ張られた。えっ……。

サユリが引っ張ってもう歩き出している。後ろ向きに引きずられる栄太。

「目立たないように集まれって云ったでしょ」

よっぽど目立っている。

もうどうでもいい。こんな楽しいときはもう終わってしまうんだ。

ちょっと、プロを目指す気持ちがゆらぎ、感傷的になった。

先生同士の仲でも、慕われる先生ばかりではないので、卒業式の後すぐに謝恩会というのは、みんなが集まる公式の行事になっている。

そのまえに、記念写真だ。サユリに引っ張られて写真に納まり。これで、終わりだとけじめがついた。



Copyright © 2011 おひろねX / 編集: 短編