第102期 #10
青鬼が暴れている。村を破壊している。
何しろ力の強い青鬼のことだ、瞬く間に村は破壊されていく。
村人は困った。青鬼を止めたいが、あの凶暴さと言ったら、怒り狂ったドラえもんのように手が付けられない。近づけばこちらがやられてしまう。仕方なく村を破壊する青鬼を遠くから見ていた。
そこにやってきた赤鬼は、青鬼の首根っこを掴むと池の方に放り投げた。えいや、と赤鬼は本気で怒っていた。青鬼が演技で村を破壊していることは事前の打ち合わせで知っているが、それでもそんなに壊したらあとで大変だろうが。赤鬼は池から上がってきた青鬼に殴りかかった。青鬼も負けじと殴りかかる。村人はその壮絶な打ち合いを遠くから見ていた。とりあえず喧嘩してるみたいだからそっとしておこうか、いつ2匹の牙がこちらに向くとも限らん。
壮絶な打ち合いの末、ぼろぼろになった青鬼は逃げだした。村人は固唾をのんで見守る。赤鬼はその後ろ姿にありったけの罵声を浴びせた。その迫力に村人は震え上がる。
やがて青鬼がみえなくなり、赤鬼は村人たちの方へ歩いてくる。かすかに微笑んでおり、とても不気味であった。ただ村人たちと仲良くなりたいから笑いかけているけなのに。
さいしょこそ、両者の間に戸惑いが見られたが、時間の問題であった。
赤鬼は村人にとけ込んだ。嫁ももらい、子をもうけた。村人として権利も裁判で勝ち取った。幸せであった。気になるのは、こてんぱんにやっつけて罵声を浴びせた青鬼のこと。もうずいぶん会っていなかった。村人にほんとうは演技であったことを言っていない。おそらく言ったとしても村人は受け入れてくれるだろう。もし受け入れなくても最高裁まで争うのみ。
赤鬼は青鬼に会いに山に登った。そして青鬼のすみかについて中に入ろうとすると戸に張り紙があった。
『赤鬼君へ、元気かい?僕は元気さ、あの件うまくいったかい?君が村人に受け入れられるとぼくも嬉しいよ。さて、僕は、村人たちに僕と君が仲良くカバディをするところなんか見られたら誤解されるかもしれないから、旅にでます。きっと一生あわないことでしょう。どうか幸せに暮らしてください。僕のことは早く忘れてください。君のともだち・青鬼』
赤鬼はおんおん泣いた。涙は大きな池を作った。
日も暮れて、泣きつかれて、ふいに青鬼の家の戸を開けてみるとそこに青鬼がいて、なんかユーモラスに舞ってて。