第101期 #11

666

6月6日。
出席番号が6番の奴は日付にちなんで教師からさされる事請け合いだ。
門川という苗字がクラス全員と絶妙なマッチングをした結果、俺の出席番号は6番となった。4月7日の出来事であった。

そして間もなく迎える6月6日月曜日。
我がクラスの月曜の一限は学校1笑わないと評判の保坂が担当する国語だ。
怒っているのか怒っていないのか、不機嫌なのかご機嫌なのか。
感情の抑揚を読み取れない平淡な声で行われる授業は、ただでさえ憂鬱な月曜日をより一層憂鬱にする回避不能なマイナスイベントとしてクラス中から疎ましく思われている。
そして俺はまさにそんな授業で指名されるであろう状況にたたされている。
皆が1秒でも早く終わって欲しいと思う授業を俺に対する質疑応答で長引かせるわけにはいかない。
貴重な日曜の時間を明日の授業で出るであろう古典の予習にあてるという献身的なプレーでこの状況の打破を試み、迎えた6月6日月曜日。
俺は広範囲にわたる古典のすべてを訳し、いつ指されても5秒以内に答えられる磐石な安全保障を得ていた。
朝のHRが終わると待ち構えていたかのように保坂が教室へ入ってきた。
いつものように抑揚のない声で「日直」というと日直が号令をかけ、いつものようにして授業が始まった。
俺の読みどおり今日の授業範囲は古典のようだった。
教科書にのっている古典の範囲は昨日のうちに抑えてあるから何の憂いもない。
さぁ早く俺をさすがよい。保坂。
 結論から言うと俺が授業中指名されることは1度も無かった。
肩透かしを食らったような気分で休み時間を迎えた俺は、後ろの席で灰となっている門田にドンマイと声をかけた。
 保坂はいつものように授業を進め、いつものように黒板に問題文を書いた。
まさに俺が昨日やった訳だ。
「今日は私の一番上の息子が7歳の誕生日だ。じゃぁ7番の門田」
なんてこった。このようにして、問題は出席番号7番。俺の後ろの席に座る門田に託された。
保坂が授業内で冗談めいた発言をしたのは初めてのことだった。
いつも通りの授業から突如生まれたイレギュラーにクラス内は騒然とし、俺は混乱し、門田はくたばった。



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