第100期 #25
そうなんだよ。
どこへだって歩いて行ける。何にだってなれる。どの瞬間にも同時に存在出来る。だから立ち上がることが出来無い。
ミサイル基地跡地の処刑場跡地。七百色同時。だって虹が百個なんだ。百個で良かった。七百色だけど「どの瞬間にも無限に存在し」
存在して。
「ねえ今の誰? 何のお話してたの?」
「お前の親だよ。お前の両親だ。お前をこれっぽっちのクスリで売ってしまったお前のおっ父とおっ母だよ」
「そう、じゃあそのお話をして」
カラフルな死体。数えきれない。鏡。ミラーマンはずっと自分を自分が見ているような気がしていて。
象だ、象なんだ。象なんだよ。
また象だ。
そうだ。
象なんだよ。どこまでも歩いていく。
「ねえ、何のお話をしてたの?」
「象でございます。お嬢様の、プリンセスの両親でございます。プリンセスをこれっぽっちの愛で産み落とされました象の話でございます」
「ねえ、何のお話をしてたの?」
「戦車でございます。プリンセスをたったこれっぽっち殺した、戦車でございます」
「そのお話をして」
さかさまがさかさまだ。
立ち上がる。バルコニー、さかさまがさかさまだ。
そのお話をして。あなたがあなたを捨てた時の。わたしがわたしで無くなった時の。さかさまがさかさまだ。ねえ、お話をして、お話をしてよ。こんな安物の毒薬。虹色。七百虹色ちゃんと眠るから、眠ることを恐れないから、怖がらないから、ねえ、お話をして。お話をしてよ。
いい子で眠るから、お話をしてよ。
わたしたちは今からずっと虹色で産まれてくる。
数えきれない虹色、七百色、巨大な中心、プルシャ、国旗、違う模様、違う人々、七百色、きっとずっとそうなんだ。わたしたちは今から、今からずっと虹色で産まれてくる。ゴーストはマシーンに居て、早口で言いつくしてしまったアビーとロード、だから虹色で産まれてきて。お話をしてよ。目が潰れるほど、潰れても良いほど、彩、ねえお話をしてよ。
どこへだって歩いて行ける。何にだってなれる。どの瞬間にも同時に存在出来る。立ち上がることが出来無いまま。七色七百のエレファント。だからそうだよ、そうなんだ。鏡は火から作られてずっと前からずっと永遠で鏡の向こう、ずっと七色の、わたしと、あなた。さかさまがさかさまだ。よくもこんなものを作ったものだ。
聖家族。皆が塔を見上げていて。
よく作ったもんだよ。
「ねえ今の誰? 何のお話してたの?」