第9期決勝時の、#2ナオミ(中里 奈央)への投票です(5票)。
「ナオミ」については、新味がないと言えばない。しかし新味を出そうとして色々な読みができるようにしようとすると、たった1000字なのだから、むしろその方が簡単じゃないかという気がする。たとえば「園芸論」を30枚とか100枚にしたらどうなるかというと、まず成立しないだろう。色々な考え方があると思うが、「園芸論」はネタが薄いのであり、1000字という枠内だから、読者が色々に補うことができるのであり、1000字の特性を生かしているとも言えなくはないが、むしろ小説の書き方としては袋小路である。「猫のドイさん」については、モチーフの珍妙さで読者の気を引こうとするところが安易である上に、その珍妙さの度合いも大したことがない。
参照用リンク: #date20030517-194310
不安定で、危険極まりない少女の心理。 復讐の為か、もう一度浸りたい感触のためか。 自分でもわからぬままに行動に入って行く少女。
結末を委ねられた読者は、さあ、どちらに持っていきましょう。
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私が予選で推した三作のうち、残ったのはこの一作だけであるので、今回あまり考える余地がない。
『園芸論』については、私はそのおもしろさをよく理解する読者ではなかったようである。『猫のドイさん』は面白く読んだが、あまりにも据りが良くて自然で、人語を話す猫に違和感がなさすぎるかとおもえた。あえて言えば猫である必然性があまりなく、何かのメタファーとして読む意見が提示されるのも首肯できる。(海坂)
参照用リンク: #date20030515-152626
●『猫のドイさん』
この作者は女子高生を巨大化させたり、猫を取引先にしてみたりと、結構無茶なことをやる割にはそつのない文章を書く。
私は不条理モノやコメディーは、面白さが最優先されると考えているので、設定の矛盾はあまり気にならなかった。ただ、この作品が人間を猫に置き換えたことで獲得した物は、単なる外見や言葉遊びに過ぎず、ドイさんが猫であるがゆえの物の見方や、考え方にまでは及んでいない。
●『園芸論』
この作品は、それぞれの章が面白く、技術的にも高いレベルにあると思う。しかし、果たしてこれが千字小説かと問えば、ちょっと違うような気がする。いわゆる部門賞的な作品である。
●『ナオミ』
計算された正統派の千字小説である。
『恨んでいるからではない。愛してしまったから……。』この小説の評価は、すべてこのフレーズにかかっている。もしも拾いきれていなければ致命傷になる。まず、殺されたことを恨んでいないのは、前半で主人公の早世願望を挿入することでクリアしている。そして、愛してしまったことは、冒頭の『雨の中で傘もささずに。』が、傘を借りる友さえいない表現であり、これもクリアしている。実際に、男の束縛や暴力でさえ、愛情表現として受け入れる孤独な女は多い。(山)
参照用リンク: #date20030508-184310
他の2作品には見られない現実味のある物語ですね。
17才のあやふやな思考。 危険な少女が上手く描けているのおもいます。
参照用リンク: #date20030505-140010