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第80期予選時の、#30ウナギ(わら)への投票です(1票)。

2009年5月20日 17時58分23秒

こちらの「短編」だけでなくサイト千字小説などで、無数の1000字小説を読んでいると、波乱万丈な物語や、いわゆる実験小説といった類のあたらしい作品に食あたりをおこしてしまっていて、この「ウナギ」のような、いっけん素朴に書かれ、いっけんヤマのない話に惹かれる。

とくに内容があるわけでもないのに、読んでいるだけで福岡の夏の暑さが、というより、それは福岡ではなく私の実家の夏の暑さなんだけども、じわじわと自分の夏休みなんかを思い出していて、この話には小説の時間が流れていると思った。

いっけん素朴、と書いたけれども、じっくり読んでみると2メートルのウナギがでてくる。実際の現実世界では、そうそう2メートルのウナギなんて見られるもんではない。だけども、なんとなく作者の術にはまって、私は、私なりの福岡(といっても想像してるのは自分の実家)の夏の中にいて、私もまた2メートルのウナギをみつけている気になっている。しかもそのウナギがイッシー。なんとなくネッシーを連想してしまう。でもその連想は不快にはならなくて、気持ちがいい。

そうして文中にでてくる母親の姿を読んでいると、親孝行ではない私までもがここでふと母親の大きさ、深さというか、うなぎをさばく母親の姿がとても懐かしいものに思えた。

「そやね。受験終わったらね」

という最後の手前の一文と、おいしくなかったうなぎ、の部分で、そういえば彼らは浪人生だったんだな、と、一気に、夏の暑さと朗らかなうなぎ取りの影にひそむ彼らの、暑さとはべつの、冷や汗のようなものまでみえてきて、そうするとなにか面白い、ではすましきれない読後感に包まれる。ほかにも窓の外から入ってくる友人だとか、いろいろとちりばめられた、いっけん無駄にさえ思える箇所が、作品を地底から支えている。1000字とは思えない広がりがうまれている。

参照用リンク: #date20090520-175823


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