第77期予選時の、#26嫌(わら)への投票です(2票)。
主人公の一面的な物の見方には疑問。つまり、「弱者(ぶる人)をただそれだけで嫌悪する」という発想も、結局は本当の実感からうまれたものではないため。つまり、結局は不満のはけぐち探しであって、それは弱者ぶるのと変わらないじゃないか。
しかしながら、なんか情報の洪水のなかで、あっぷあっぷしている一人の人間の状況、というか、必死に自分の考えをつくろうとしているというか、叫びのようなものが文章のすきまからきこえてくる。書かれているテーマは浅く感じるが、そのテーマを抱えている主人公の状況事態に深みをおぼえるのだ。この主人公がやがて結婚して妻に逃げられて雪山に探しに行って、と前期作とつながっていったら、おもしろいだろうなあ。
参照用リンク: #date20090227-111141
ストーリー自体は比較的普通。起承転結はしっかりしていて、このサイズの短編小説としては可もなく不可もなくといった具合。周囲に敵意をむき出しにして結局は自己嫌悪するというのはよくある話だが。
しかし使っているパーツの新鮮さが良かった。実に今風の、よく耳にする苛立ちを、実に上手く使いこなしている。
政治・宗教・人種・身体障害など、普通は避けたい話題にズカズカ踏み込んでいるのに軽く驚いたが、タブーを犯してはったりをかましているわけではない。文がきちんと練られていたせいか、そんな青臭さを感じない良作。
参照用リンク: #date20090218-194118