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第75期予選時の、#17(わら)への投票です(1票)。

2008年12月25日 15時29分45秒

 一言で書いてしまうと、文体がひきしまっている。この作品の魅力の第一は、この文体だと思うのだが、文体の魅力を説明することは難しい。それは作者の魅力を語るようなものだからだ。

妻が死んで意気消沈の男が比叡山に幻想を追いにいくという筋だけみれば、「短編」には似たような話がやまほどある。読者兼書き手の多くは、そのようなストーリー中心の話には飽きてしまっている。「無理矢理感動させない点がいい」という感想が多いことからそれがわかる。

しかし、ストーリーのある話がつまらないのではなく、それを書く作者が力不足なのだ。物語の骨格がきちんとしている話は、本当は面白い。この作品「雪」は、本当はとても甘いストーリーなのであるが、その感傷部分を作者の硬質な文体がしっかりと支えている。読んでいる時間は1000字なので、ほんの少しのはずなのだが、この話に流れている小説の時間というものが、まるで私をも雪山に旅立たせ、そのヒバゴンというものを見たような気がしているから不思議だ。小説というものはこんなに面白かったのか、と思った。

参照用リンク: #date20081225-152945


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