第74期決勝時の、#3マッチ箱より(藤舟)への投票です(2票)。
・決勝3作品の印象(と不満)
今期、決勝に残った作品ついては、わさび抜きの皿しかまわっていない回転寿司屋を連想した。
「マッチ箱より」の恋愛より、私は「擬装☆少女 千字一時物語40」の擬装した男(つまりオカマ?)と美男子の対話の方に味わい深さを感じるし、ダンジョンでモンスターと戦う「魔法使いレイリー・ロット」より、歌舞伎町のダンジョンをさまよう「眼鏡」が断然いい。僕を見てーと目立ちたがり屋の話である「蟻と作曲家」よりも、ただの駅名に押しつぶされそうになっている「FUSE」のほうが身に沁みてくる。つまり、決勝の3作品に足りないものがすべて予選作品にある。
……そうはいっても、それは私が年をとってしまったからかもしれなくて、高校生だったらまず「擬装少女」は想像するだけで吐き気がしたかもしれないし、それに比べれば「マッチ箱より」に強く共感を覚えたかもしれない。ダンジョンの話もそうだ。蟻の気持ちも若さに結びつけると納得できる。
そう考えると、読者とひとくちにいっても、この投票は中学生から老人までいることを思い出させてくれる結果となった。つまり、決勝作品が質として優れているかは多数決コンテストにおいてはその限りではない、という一方で、世の中の流れが「決勝」をみれば見えてくることがわかる。
だが名作は必ずしもベストセラーとは限らず、時代の多数決に残らなかったものが埋れている間に発酵し、ある時期に蘇ることで名作となっている例も結構多いと思う。過去の投稿作品をぱらぱらと読み返してみて、その例が多いことに驚く(ここでは例はあげない)。
今期の「擬装少女」など、作者自身さえその良さに気付いていないみたいだが、作品の方はいつかまた陽の目をみるときがくるだろう。
・3作品の中から選ぶならば
「マッチ箱より」はオーバーな表現が気になったものの、思春期の主人公はだいたいこういうものだろうな、と思うと、リアルな受験生像が描けているとも思える。消極的理由であるが、これに投票する。次回作に期待してます。
参照用リンク: #date20081204-093635
受験勉強に駆り立てられていることだけでは今時世相の反映にはならないのでしょうが、それに加えて主人公は二度も言おうとしたことが言えないでいて、感じやすい割に伝えることが苦手なところが世相の反映なのかと、ふと思いました。(黒田皐月)
参照用リンク: #date20081202-190846