第7期予選時の、#13愛なかりせば(朝野十字)への投票です(3票)。
単なる思いつきやムードでないものがあって、まともにぶつかっているところに好感。ただこのタイトルはどうだろう。あまりにも内容とぴったりし過ぎているのではないだろうか。
参照用リンク: #date20030304-201108
今回は、読めないほどひどいものはなく、質的に一定レベルの作品が集まっていたと思う。が、欠点というか気になる点、手放しで楽しめる作品というのもなかった。
そのなかで、この「愛なかりせば」は、「この世に愛なかりせば」というところで素直にじーんと来た。ただ、問題がないわけではなく、一番は「愛」という名の女性の行動が不可解なことだ。唇も許さなかったのが、どうして最後に許してしまうのか。そのあたり微妙に変ですっきりしない感じを読後に残した。設定や話の展開は耳にタコができるほどありがちであって新鮮味はなかった。でも、料理のしかたはセンスよかったのではないかと思う。
参照用リンク: #date20030304-011711
物語の筋としては特筆すべき点はない。亡妻に思いを残す男、見守る女、近づきたいが近づけない、このもどかしさはドラマでもよく見るありふれた素材だ。しかし、ありふれた素材であるからこそ人は無条件に愛するのであって、何かひとつ気の利いたエッセンスが小サジ一杯分でも盛られれば、物語は非常な輝きを放ち始めるのである。この作品での小サジ一杯分のエッセンスとなっているのは、もちろんタイトルの「愛なかりせば」と、その作品への組み込み方だ。愛は概念であり、人名であり、人が生きるために必要な全ての象徴なのだ。アリアリの王道で勝負した潔さと手堅さ、一味加えたセンスは買うべし買うべし。
参照用リンク: #date20030302-174506