第68期予選時の、#21嚥下(森 綾乃)への投票です(2票)。
「骸から何とか目を背けようとしてきた。布を巻いて暖かくしてやれば、いつか動き出すと思いたかった。あるいは、丸ごと忘れたかったのだ。野晒しで日に焼け、劣化した布をかさかさと除く。白い骨だけ残っている。それは、鋲のように確実に死んでいる。生き返りはしない。あたりまえの事実をようやく認める。一番小さいかけらを、しばし指先で操り口に入れる。舌で弄る。奥歯で砕けない。意外に鋭利な角で喉の粘膜を痛めながら、今、私は嚥下する。」結部をまるごと引用してしまったが、そうせずにはおれない気持ちににさせる凄みが、この文章にはあると思う。肺腑をえぐるこれらの言葉を、僕はただ、黙って嚥下する。(でんでん)
参照用リンク: #date20080527-193343