第68期予選時の、#20九龍(sasami)への投票です(7票)。
この小説には投票せねばなるまい、と思わせてくれる作品でした。
「カオルーン」の頭の中の物語あるいは妄想、と「言葉」の持つ「他者性」との出会いが素晴らしく、また、言葉を剥奪された世界が「笑い」というコミュニケーションで瓦解していく、という構成が、何より美しいと思いました。
二人の世界が永遠に続いていく、といったような、おセンチかましたヒューマニズムには虫唾が走るばかりですが、「言葉」との対立の後に、コミュニケーションの希望を見出したこの作品のようなヒューマニズムは、感動を喚起されます。
千字という制約のある分、ト書きのようになってしまっている感は否めませんが、「もっと長い文章で読みたい!」と思わせる時点で、パワーのある作品であると言えると思います(最後の場面をもっと長い文章で読みたかった)。
この作品に一票を投じます。
参照用リンク: #date20080531-020500
「九龍」
あんまりセンスがいいと、嫉妬してなんとか汚点を見つけようとしてしまう。この作品が私にとってはそうだった。しかし、上手なのは上手だと認めていかなければ自分のためにならない。
……とこの作品を強く推薦しようと思っていたら、ちゃんと投票されていたので、さすがは68ヶ月以上つづいている「短編」だと思った。この作品については決勝投票で感想を書きたい(と、すでに投票を決めている……)。今期、どれもいろいろ面白いのだけど、ひとつ飛び出た作品だと思いました。
参照用リンク: #date20080526-164922