第60期予選時の、#5蜜柑(森 綾乃)への投票です(3票)。
おもしろかったです。自分の何かを肯定するために、別のなにかを軽蔑する――この主人公は優しさ、ぬくもりの象徴であるハウス蜜柑を守るために、中国産を嫌ったり清潔でなければそのハウス蜜柑でさえ拒否します。私は正直にいえばこういう思考パターンがあまり好きではありません。でもこの主人公が30代以降ならともかく20代前半だと考えると(前作もそうですが)話はかわってきて、子供が自分の意見をしっかりもった大人になるためには自分の好きなものと嫌いなものを明確に線をひいてわけることが必要なのではないか、と思えてきます。
そういう意味では、おそらくアルバイト帰りを連想させる一人暮らしの主人公がふらっと寄ったスーパーで「中国産よりハウス栽培!」と自分で考えて、でもそれじゃあ予算が足りなくて、「自分には105円がふさわしい」と無理やり納得させて、でもその結果のミカンの缶詰が思ってたより透明でおいしかった、という流れを追っていると、主人公の在り方が他人事ではなくなってきます。
余談ですが、この主人公はどんな音楽や本や絵や写真を好むのでしょうか? 私はまだ主人公は自分の好きなものがわからない状況にいるような気がしています。この主人公が今後ミステリアスな人と出会い、触発されてどんどん変貌していく過程を読みたい、と思いました。
(ロチェスター)
参照用リンク: #date20070929-133907
表現は非常に丁寧で、話もしっかりしていて、まとまっている。
悪い表現をすれば、国語の教科書のような作品にも見えるが、
いい意味で、本当に国語の教科書に載っていそうで恐ろしい。
文学系が嫌いな私でも、素直に楽しめた作品。
みかんにかける想いが非常に綺麗に見えた。
参照用リンク: #date20070920-195538