第59期予選時の、#2硝子の虫(森 綾乃)への投票です(3票)。
医療器具をグロテスクに描く様子は小川洋子氏の短編を彷彿とさせます。しかし眼科で検診を受けた経験からすると、「あの日のオオカナダモを『見ている方の』気分」に近いです。グロテスクに感じるこの検査の体験によって主人公に何が起こったのか、それはよくわかりませんでした。そして「返せ、その写真を」のくだりからすぐ段落と場面を転換せず、ここをもっと追求して欲しかったです。おしい。
なお作中の散瞳薬については、それによって光が余分に入るため眩しかったことは覚えているのですが、物がくっきり三重に見えたという記憶は無いです。この作品は作者さんの体験に基づくものかと思うので、もう少し聞いてみたいものです。(とむOK)
参照用リンク: #date20070831-221526
今期のイチ押しである。いびつに歪んだ、ぎりぎりの均衡で配列された言葉たちのひとつひとつを、散文詩を読むように愉しんだ。たじろぎ、注視し、いきなり跳躍する、この魅力的なリズム。誰の文体とも似ていない不思議な声、節回し。(でんでん)
参照用リンク: #date20070828-193751
「悲劇的な」というのは「悲観的な」の方がいいんじゃなかろうかとか、まあ重箱の隅的な傷は目に付いたんですけれども、暗喩に代表されるいろいろな表現が新鮮で感心しました。単に技術的な話ではなくて、話者の精神の張りつめ方といいますか、別に不思議な所もない日常的な風景に反応するレベルが、普通ではないと感じました。(海)
参照用リンク: #date20070826-155123