第50期決勝時の、#30ちーちゃん(曠野反次郎)への投票です(1票)。
『蟲』は題材が奇想天外な上に、叙述の手口がまた斬新で、意欲的な作品とおもった。ミュージカル仕立てにした部分は、じつに上手いと感じたが、私の好みでは普通の文体で押していった方がよかったような気もする。ただ、同じ虫でも拙作に比べればこちらの方が楽しい「小説」であることは間違いない。
『愛唱歌』は、正直に言ってどう味わってよいか私にはよくわからなかった。『神曲』の世界に日本的なものを遭わせてみたらどうなるかという、異文化遭遇のような狙いだろうか。書いていて思い出したが、高橋源一郎なぞのポップ小説のような感じもあるようだ。
『ちーちゃん』は予選でも推した。曠野さんは鬼気迫る抒情を感じさせる作品が多いと思うが、この作品はめずらしく作者の心の温かさを、かすかな照れと共に覗かせているのがよかった。(海)
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