第39期予選時の、#24部屋(曠野反次郎)への投票です(3票)。
儀式的空間の演出が絶妙です。ただ本だけを並べずへの字口のクマのぬいぐるみを配置するところとか。印のついたメモ、あたかも何か調べたように散乱した本、部屋の外への展開を思わせる流れだったのに、いきなり密室オチで裏切られました。裏切られていいの? いいの? と不安になりながらも表現に酔って読みきれた作品です。
蛇足ですが、るるるぶ☆どっぐちゃんサンとはキーボードつながり。
以下、長くなりますが、その他の気になった作品について書きます。
4 幻のデート 朝野十字さん
朝野さんはこういうオチものも実に上手いですねえ。
ただ、死産だった妹をここで出す理由が私には読み取れませんでした。他の作品を読むと、もっと登場人物の関係をきちんと拾って書いているし、今回の妹は、オチのためだけに使われている気がして、残念です。
10 Egg 時雨さん
お母さんの感じがなかなか良かったと思います。
「生卵がゆで卵に姿を変えても卵であることは変わらない」…焼いたら骨になりますが? という妙なツッコミが頭に浮かびました。亡くなっても母は母、というのが書きたかったのだとすれば、最後年老いていく母でなく、亡くなった母への気持ちを書いて欲しいと感じた、ということです。
11 そしてとても温かかった 真央りりこさん
こんな水曜日いいなあ。これを読んでいた時、折しも水曜日。途中下車して遊んでたんだけど、ちょっと何か期待して路地裏に入ってみようかなあ…。もう夜だけど、暖かい夕間暮れの残滓だけでも嗅げないかなあ。
感じたままに言いますと、占いの結果に気をもんでしまった一読者としては、路地の店の並びなどどうでも良くなっていて、結果、場面の転換に戸惑ってしまった。
結局小瓶は倒れなかったようですが、それは、どうでもいいですか?
15 15分だけ ヒロさん
15番目で「15分」っていいタイミング。
時間限定でなきゃ傍にいてもらえないって思い込む理由を考えてみました。彼を受け入れるも何も、彼女の感情は慰めて欲しいときに傍にいて欲しいだけの一方的なものであり、つまり愛ではなくて依存だったんです。その後ろめたさを無意識に感じて「15分」なのでしょうか。
彼女の告白を受け入れるにしても断るにしても、彼は吐息をつくしかない。そんな孤独な、悲しい物語なんですね。
16 トーフ地獄 ヒモロギさん
うーん…「もったいないオバケ」の変形でしょうか。これくらいで地獄を一つ増やしてたら、ピーマンとかセロリとかの立場は…。
地獄の閻魔になるほどのやり手のキャリアウーマンなら、提案者に全責任を押し付けて辞めさせるくらいの開き直りがないと。まずライバルの調査結果を鵜呑みにするあたり、地獄の経営者としては甘過ぎますよね。
ラストの表現は印象に残りました。
17 よめさらなめゆ しなのさん
嫁皿舐めゆってピノコですか。皿まで舐める貧乏性が嫁の肥満の始まり…って余計な話は置いといて。
二期前の作品と表裏一体なのでしょうか。時間遡行の無意味を論述するのはいいのですが…ラストにうまく繋げて読めませんでした。というのは、「時間の方向など、どうでもいい」という結論が既に出てしまっている状態で、どっちに向かっているか問うのは既に無意味なのではないかと疑問を持ったからです。
さらに。遡行に認識が遅れるという設定はわかるのですが、さらに遡行した場合、高校生の認識で小学生の一瞬を過ごすのでしょうか。今語っている「わたし」が、遡行を始める起点の自分でさえないという可能性も思い浮かびます。そんな自己喪失の不安に包まれている時間に、感情とか愛とか語っている心理的余裕はなくて当たり前だと思います。
参照用リンク: #date20051104-224930
>なぜだか熊のぬいぐるみが置かれていて、色も大きさも不揃いながら、みな一様にヘの字に口を結び
すげえ。
……という感想しか書けないです。申し訳ない。
参照用リンク: #date20051104-001057
ボルヘスの香りがする作品、と言うだけで一票を投じます。
欠けたタイプライターはエノンセとディスクールのメタファでしょうか?
参照用リンク: #date20051026-154237