第39期予選時の、#16トーフ地獄(ヒモロギ)への投票です(3票)。
今期もっとも新鮮で、くっきりしたイメージを与えてくれた作品である。『往生要集』の時代から、人間は地獄をさまざまに想像してきたのに対して、極楽のありようはワンパターンであるとよく言われるが、ここにまた新しく一つの地獄がつけ加えられたわけである。(海)
参照用リンク: #date20051113-214525
「トーフ地獄」のおもしろさは、「豆腐を粗末にする人間への憤り」という一応、もっともなテーマをあげつつも、攻撃的でも、感傷的あるいはイデオロギー的な話に陥ることなく、徹底的にトーフ地獄を実現しようとするお話に専念したところにある。
舞台は地獄であり、トーフ地獄の具体的内容についての検討会からはじまる。地獄にすむ牛などは「鉄塊を仕込んだ豆腐の角を亡者にぶつける」という提案をしたりして、これは「トーフの角に頭をぶつけて死んでやる」という古典的ギャグをもちろん踏まえているのであるが、作者は「極めて退屈な牛頭のプレゼン」と簡単にすます。しかし僕にはこれは新鮮で刺激的で笑わせてもらった。物語は進み、「地蔵豆腐」という「喉のやける冷奴」で話が決まるのもおかしいし、ここから物語がひっくりかえって、「豆腐を粗末にする人間」というのが女閻魔のデマであった、という「だいどんでんがえし」にはおどろいた。まあ、結末にはやや不満が残るが、十分力のある作品とみた。
参照用リンク: #date20051029-154337