第35期予選時の、#18ぼうぼう(くわず)への投票です(6票)。
くわずさんは描写のすごい人だとは以前から思っていたのですが、この粂婆さんの生きる姿には「まいった」という気分です。「世の中は、生きながらにしてまみえる極楽であった」この境地に辿り着くまで、一体どれだけの生を過ごしてきたのだろう。
参照用リンク: #date20050714-233955
堅牢な描写、方言の導入によるリズムの変化のつけ方、物語の意外な進行。王道を行く骨太な作風。前半の文章にはザラリとした粗さがあるが、それすらもむしろプラスに転じているような勢いがある。病に臥した孫の姿を幻視する、物語としては暗い先行きだが、にもかかわらず、全編をアッケラカンとした明るさが貫いている。「人で無いものの時間」に目覚められる身体になったことに、「有難さ」を感じる――こんな観点はユニークだし、どことなくユーモラスでもあるが、いずれにせよ、こんな文章はおいそれと書けるものではない。思わずはっと立ち止まってしまう、きらりと光るセンテンスは、こんなところに隠れている。なお、当方としてはところどころ中上健次の文体、その呼吸のリズムを想起しました――例によって、当方の勝手な思いこみか?あるいは、くわずさんもそのあたり意識したかしらん?(でんでん)
参照用リンク: #date20050714-131634