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第35期予選時の、#14夏の葬送(佐倉 潮)への投票です(1票)。

2005年7月14日 13時16分34秒

ちょっと気取っているかな? とは思う。一つのイメージに固着しすぎるあまり、世界がなかなか拡がっていないことを、物足りなく感じもする。それでも、黒い服の男たちが、「ぞろり、ぞろり」と参集し、一群となって歩いていくイメージは、鮮明に伝わってくる。「どこかで人が死んだのだ――そう思うことに、きっと慣れている」僕、とか、「ミニチュア大の人生が演じられている」といった独白はありきたりだけれど、「どこかで人が死んだから人が集まり、また離れる」と、うんと思い切った距離から鳥瞰してみせる視座には、そんな類型的なニヒリズムから頭ひとつ分抜き出た力を感じる。遠くから見ていると分からないことがあるように、遠くから見て初めて見えてくることもあるわけだ。そう考えながら読み返してみれば、作者の健闘が見えてくる。末尾、八月十五日という決定的な日付のさりげない提示を、唐突かつあざといと見るか、それとも至極まっとうな着地点と見るか? 僕としては、全体を貫流する不吉さと虚脱感を敗戦のイメージへと収斂させるこの締めくくりに、無理はないと思う。ともあれ、今期、この小説に一番可能性を感じた。(でんでん)

参照用リンク: #date20050714-131634


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