投票参照

第30期決勝時の、#18夢の終わりに(サカヅキイヅミ)への投票です(1票)。

2005年2月21日 18時10分32秒

 今期も懶惰により全作品を読むことは出来ず、〆切前日に予選通過作のみを読ませて頂いた。以下に簡単に感想をのべたい。
『麦畑』
 ふつう宇宙人に遭遇すればもっと怖がったりするのではないかという疑いを持って読み進め、最後に来てそれは鮮やかに解決されたが、そうすると今度は「UFO」「宇宙人」「月」など、地球人的な観点からの用語がやや安易に流用されているようにも感じられた。
 全体的なイメージは綺麗で、雰囲気も佳かったのだけれども。特に、主人公の望郷の念は切なく印象にのこった。
『雨上がり』
 「西陣京極」「北野」などの地名には、これまでの文学の伝統の中で育てられた喚起力があるもので、得してるなあと思う。実際どういう所なのかは別にして。
 いつものように奔放に繰り出されるイメージが、本作ではやや拡散して焦点をぼやかしたような感じがした。そうは言っても、そのとっ散らかった辺りが不気味な絵のようでもある。
『硝子鳥』
 綺麗で脆そうな感じはしたけれど、何故かこの鳥そのもののイメージとしては今一つ鮮明でなかった。十円という値段が最後に来るのも、理屈としてでなく、詩的な意味としても正直言ってよくわからなかった。
『恋』
 題材も表現も、今日びの文芸誌の小説から一部を取ってきたようである。充実していると思うが、その代わり一杯いっぱいで、この状況はもっと分量を使って発展させられるだろうと思った。「姉こそがまさに無駄な恋を、桜井さんにしているのではないかと。」という結びは言わでものことで、それでこの三人がどうなるかを知りたい。
『夢の終わりに』
 もう一歩で自己満足に陥るギリギリの所で踏みとどまっていると感じられた。じつは私も読み始めは、自閉した寝言のような作品かと危惧したが、全くそうではなかった。
 予選時の票感想にも際だって長文が寄せられており、読者に考えさせる力を持った作品である。
『道行』
 語り口といい題材といい、正統的な純文学という感じで、好感を持った。これを推してもよいか、と思ったが、作りがいささか薄い。まず語り手が透明すぎると思う。(たぶん弟と思われるがこれでは男女どちらかもわからない)、字数もあるのだから、もう少し書き込んでもよかった。

参照用リンク: #date20050221-181032


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