第3期決勝時の、#11あなたへ(黒木りえ)への投票です(6票)。
これしかないと思った。『記憶』は、字数からしても、もっとバカなことができたろうという不満がある。『ある港町での出来事』は、けっきょく少女は夕陽にひきずられて沈んでしまったのだろうことを示唆する結末とその描きかたがよかったが、なぜか逃げるようにして帰るとか、本当に夕陽が沈まなくなったりとか、いささか大ゲサなところが作品のふんいきを害しているように感じた。両者に比べて『あなたへ』は、ネタの消化に不満がなく、ふんいきは一貫して保たれており、のみならず描写に精彩があって筆致は流麗にして構成の妙技に加え……ってもういいや。これしかないのだ。
参照用リンク: #date20021118-230147
「あなたは」の繰り返しが、責めなのか喜びなのかそのとおり無機質なものなのかが曖昧で謎を解かせるだけに使われたような印象を良しと思わず予選では投票しなかったのですが、それは読み手に任せるものだと考えて、トリックを楽しませていただきましたと申し上げておきます。
参照用リンク: #date20021117-180931
二人称を用いながら、書簡体でもない独白、という語り口の特異さはすぐ気づかれるが、この作品の不思議な味はそれだけではない。たとえば「あなた」が何者であるか、また看病していた病人との関係も、ほとんど明らかでない。そのような個的な情報を大胆に捨象し、代りに荒れ果てた家のさまなぞを丹念に書き込むことによって、パートナーを失うという状況の普遍性をあらわし得ている。
なお、抽斗の中の手紙がどうして「あなた」の行動が観察でき、「あなた」の思いが推論できるのか、という感想があったが、的外れというものである。それを言うならばもともと手紙が自分の意識など語るはずも無い。
参照用リンク: #date20021116-171622
第三期作品が公開されたその日、我々が初読したその日、すでにこの
結果は決まっていた。封が切られなかっただけなのだ。
けれど参加一四作品中、一三作品が得票しているというのはちょっと
割れすぎではあるまいか。という気がした。
参照用リンク: #date20021108-035705
使われている言葉と、言葉の出てくる順番、そこから立ち上がってくる世界が好きです。言葉が新鮮で、真剣な世界が書かれていると思いました。最後にひねりもあって、物語として成立しています。
参照用リンク: #date20021107-110834