投票参照

第25期予選時の、#12月魚(安南みつ豆)への投票です(2票)。

2004年9月8日 23時4分42秒

女の子の眼の内側から眺めた世界が、彼女なりの誠実さで破綻することなく語られており、不思議な懐の広さで読む側の主観を覆っているように感じた。全体を包むのではなく、コンタクトレンズをぽとりと眼球に添わせたような、片括弧の視点がよかった。
また、造語については、月草や水カゴなど統一したイメージを持たせにくい語を使うことに対して、重要な想像上の生き物である月魚には、赤やガラス、飴色などの、イメージが確かに伝達されやすい表現が用いられていて、描写における技巧のたしかさや心配りが感じられた。
「ブレイクダウン」の少女たちはいまに、明日にでも大人になり始めようとしてしまうだろうと思う。「月魚」の少女には限りなく停滞に近い時間の流れを感じた。「椿」の娘は、徐行していたその時間を、行き倒れの女によって加速させられている。「髪」の竹子さんはすでにその速度を自律できる年齢で、髪を切るほんのひと時だけ速度を緩めているのだろう。
それぞれが日常生きる中のドラマであるようで、今期は女性が主人公の作品がよかった。この中で、そのドラマが匂うように映り、一際うつくしく描かれたこの作品に票を入れることにしたい。(市川)

参照用リンク: #date20040908-230442

2004年9月8日 20時22分37秒

 はじめに読んだ時は、「月魚」というファンタスティックな生き物(なんだろうと思うが)にまず魅力を感じたが、よく読んでみると裏に主人公の少女の物語が隠れている。孤児であったのか、または親戚に引き取られたのか、とにかく新しい父親と共に生活を始めた、その手探りの稚い不安が微かに暗示せられている。
 技法としてはとにかく「月魚」という綺麗なイメージをつかまえた所がまず手柄であり、それに「ロビンソン」という現実を噛み合わせたのがまた上手い。ちなみに私の地元にはこの店が無いのだが、幸い旅先で見たので何のことか判ってよかった。(海)

参照用リンク: #date20040908-202237


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