第246期決勝時の、#7焚火(霧野楢人)への投票です(2票)。
#7 焚火
「僕」は傷ついているがそこから脱しようとしている若者で、やっさんは「僕」に何かを教えようとしている。冬山や焚火の正確な描写が、二人に説得力を与えている。
やっさんは山が好きで、「僕」も自然の中で、心を安らげている。やっさんが「僕」にあげたいのはただの慰めではない。やっさんが現場監督として山を一つ消した事があると「僕」に告げることは、辛めの激励になっている。二人は、処分通知を燃やして気分を晴らすという目的以上の何かを獲得し、共有しているように見える。
複数のシーンを高解像度で綺麗に見せる。複雑で淡い感情を大切なものとして狙って書いている。痛みや喜びを書いている。若さや、人間について書いている。#7はやってることのレベルが高いと思って、推薦します。
#4 黒い幽霊
(笑)については、雑誌の対談記事やインタビュー記事風というか、誰かが語るのを文字起こしした雰囲気が出るので、話のいかがわしさや俗っぽさの味付けになっていると感じた。そのため重要な要素であり、省略不可と思う。
難しさがなく、落語のような納得感がある。きっとたくさんの人を楽しませる事ができる。
#9 アイ アム インフォメーション
考えてみれば、美術館というものは展示以外のことの方が鮮明に記憶に残っている。少し気取ったり、格好つけてる心理描写はよかった。主人公に小物感があり、赤い神に再挑戦しても負けると思う。庭を見渡せる来館者用の椅子に座っていることに対して、なぜ?とは思わない。
参照用リンク: #date20230405-155107
野外の動植物、サバイバル術から人生まで、様々なことを教えてくれる人との貴重な出会い、素晴らしいですね。利き手に取ってだけではなく、話し手にとっても良い聞き手は得がたいもの、双方にとって濃密な時間だったことでしょう。
『黒い幽霊』も着眼点は悪くなかったと思います。他の方の感想にもありましたが、(笑)が多かったのは気になりました。あちらの方も、事情を分かってくれる良い話し相手と出会えて良かったですね。
『アイ アム インフォメーション』も着眼点は悪くなかったと思いますが、実はそこにあるものが”女とその家族のいる風景”だったかもしれませんし、せっかくの、圧倒されるほどの強い印象に対して、”もう負ける気はしなかった”とは、もったいないなぁって思ってしまいました。圧倒されるほどの絵とはなかなか出会えないものと思います。それには圧倒されておいて良いのではないでしょうか?
参照用リンク: #date20230403-163211