第235期決勝時の、#6はぐれ島(志菩龍彦)への投票です(1票)。
予選の感想で一通り書いてしまって、再読しても印象は変わらなかった。比較的地味に感じるのは淡々とした筆致のなせる技で、じわじわと膨らむ違和感、重さを増していく恐怖感を生んでいる。
時計には時を刻むもの、歴史を刻むもの、確固たる指針のイメージがあり、異様な状況におけるリアルさが裏づけられている。その上、ロレックスだ。時計は全く詳しくないが、これが安物の腕時計やデジタルやスマートバンドだったら台無しになってしまうだろう。歴史あるブランド品、島に一つだけ持ちこんだ文明、遭難者の拠り所となり、窮地から救ってくれてもいいはずのものだ。しかしそれが逆に足元を揺るがす、正常と異常の根底を覆す役割を担う。(同じ状況に直面したら、私は自分の正気を疑うだろう。)ロレックスの時計というキーアイテムは強すぎる。
他の方の感想を読んで、「私」の骨が消える意味に疑問を持った。骨は消える、そこまでが島の怪異だと読み、簡単に受け入れてしまったが、骨が消える必要はあるだろうか。骨もまた時間と歴史を示す確固たるもので、時計よりも強烈だ。文明的ではないかもしれない。もし時計のために消されたのであれば、骨も浮かばれますまい。
参照用リンク: #date20220505-232836