第232期予選時の、#11帰宅部の活動(Y.田中 崖)への投票です(3票)。
多分、人体が直接ネットワークに接続され、「帰宅」がスポーツ化されている近未来や、主人公と、主人公に告白?したような同級生の存在や、超えるべき壁としての姉(鬼畜)といったキャラクターとの関係性を詰め込んで、疾走感がちゃんと残る素晴らしさ。
惜しむらくは情報密度が高すぎるのに疾走感があるので一読目は情報をうまく呑み込めなかった。2回目、3回目を読む楽しさがあるというのはそう。
分量的に2倍くらいあった方が読みやすさと豊かさのバランスがよさそうに感じた。歩道橋の踊り場にガードレール・ポスト・フェンスで着地したのが最初誰かわからなかった。その前に既に四段飛ばしで階段が上がっているので姉ではないと論理的にわかるけど。
あとお姉ちゃん、足止め目的ならちょっと酷すぎないですか。男子小学生なんか悪いことしたの?
あと気になったもの。
#2 呪文
なんで、みんなに慕われるおじいさんがそんな呪いを残したのかと思っていたけど、他の人の感想を見ると催眠と描かれていて、腑に落ちた。呪いというより催眠に近いものだとしたら、慕われるところからすでにおじいさんの術中であり、何でそんなことしてるの?という狂気が見て取れて、とても良い。
#6 雄弁は銀メッキ
しんどい世界に対する態度として、#1の話と対称的のようで、実は似ているというのが面白い。
タイトルも小説の一部であることがわかる小説。男は作中で喋らないけれど、ステレオタイプ的に見える、毛髪と成長がなくて泥臭くい中年の行動・存在そのものが雄弁であり、それは、この世の若さとか成長とか意識の高いキラキラしたものに対して、腐食してしまわないための実用的なメッキなのだ。装飾を目的とした(それだけじゃないけど)金メッキでないところも良い。
完成度高し。
#12 フグ村フグ太くん
1000字なのに最初にフグ村フグ太の歌が出てくるあたり、最初から贅沢な感じがある。
ノブレス・オブリージュを受け入れている人間のつかの間の休憩だったのか。切実さのようなものを裏に感じつつ、本人が言うように抑制された嗜み方を感じる。
大富豪の気まぐれに巻き込まれる一般人という形ながら、奥さんのことをフグ村フグ太くんと呼んで、彼のことを思い出すぐらいに、語り手にとって豊かな時間だったのに違いない。親愛のある人にしかフグ村フグ太とは呼べないよね。(ほんとか?)
確かにそういう豊かさを感じる小説だった。
参照用リンク: #date20220115-163501
良いものが多くて選べない。
#11 帰宅部の活動 を推します。
アルティメット帰宅部とでもいうのか。躍動感のある漫画のコマ割りで読んでるような、シーンの緩急とドラマがあり、王道なエンターテイメントがあります。
#12 脱力系ですが、なんか好き。フグ村フグ太が伝染していく物語の一部かもしれない。
違う世界の人間の人生がほんの一瞬重なる、その短い時間がお互いの人生を豊かにすることがあると思います。
参照用リンク: #date20220114-031257
動作のスピーディーな描写にわくわくしました。パルクールですね。アクロバティックな動作で周囲を魅了するフリーランニングと違って、最速の移動を目的とするスポーツだそうですが、真剣に取り組んでいる様が伝わってきます。”帰宅部”ってこんなにハードな部活だったのですね。
参照用リンク: #date20220113-125301