第228期予選時の、#1居場所を持たぬ者たち(いぶき)への投票です(3票)。
人間が描かれている。
自虐めいた内容にも関わらずしつこくなくさらりと読ませる文章がよい。諦念の心地よさみたいな。きらきらした歌詞と語り手の状況との対比もうまい。
ラストの台詞ははじめ嘲りとして読めたけれど、妬みでも称賛でもよくて、歳月を経て積み重なったそれらの感情がすべて詰まっているんだなと思った。
参照用リンク: #date20210926-060849
一読でこれ! と決まることはあまりないのですが、この作品は最初に読んで投票しようとすぐに決めました。自分の居場所に必死にしがみつかなければいけないのは夢を諦めても、夢に向かうと決めても同じことで、どちらを選んでも同じだけ苦しいのだというのが平等な視点から描かれていてすごく納得がいきました。「石田はずっと動かない。」で終わるのかと思って、終わったとしてもとてもいい終わり方だと思うのですが、そのあとの二行が非常にいい。「ずっとそこにいるんだな」という言葉の含蓄が、そこに居続けていることへの羨望、そこにいてほしいという願望、そこから動けないことへの侮蔑、興味のなさを示すボヤキ、すべて含んでいて素晴らしいと思いました。誰か役者に発音させて聞いてみたいけど、発音した途端にどれかの意味に寄ってしまいそうで、これはまさに小説だから表現できる感情だと思いました。堪能いたしました。
参照用リンク: #date20210915-221143
オチ >「ずっとそこにいるんだな」
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サゲ >俺は白い顔に向けそう呟いた。
このセリフ、オチ、サゲになって決まってる。 1000字ならコピーキャッチした感覚。
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面白い。 キチンと書いてある短編。小説。
参照用リンク: #date20210915-121256