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第219期決勝時の、#2お先に失礼します。(テックスロー)への投票です(1票)。

2021年1月4日 3時19分41秒

「お先に失礼します。」今期はこれを推します。「健吾」の存在意義を健吾自身や読者にも問いかける、読み方の幅のある楽しい作品。字数内で必要な描写が練り切れている。読者の予想を破って再度まとめている。以上の3点で優れている。

「渇して井を穿つ」は主人公の外観内面を端的に描写できていると感じる。汚らしく愚かな青年の心の清浄な部分を僅かにきらめかせるような構成と私は認識していて、それゆえに短くとも作品として成立していると私は考えている。そのため、これが面白いか?ということに焦点を当てて感想を書ける。テーマが普遍的といえばそうなのだが、描写のうち確かに伝わる部分は浪人生とかニートとかの紋切り型のイメージを多く借り、そこから出ないものであるので、「健吾」を加えた桃太郎である「お先に失礼します」に比べて、面白みに欠けるかなと今回は考えた。

「湖西線に乗って」については、仕事人間な主人公が、仕事以外のものに心を開いてくきっかけを描いた話なのだが、千字作品の練度としては「お先に〜」に軍配があがるかなと思った。システマチックな舞台装置の動線の美しさに惹かれたエピソードは、それまで仕事一筋だった主人公の羽化らしくていいと思うのだが、その具体的な描写がないとその舞台装置の動線の美しさについてあまり想像できなかったので、主人公が見たものを書いてほしかった。(主人公が惹かれた台詞はそれらしくて良かった。)また冒頭の湖西線の車窓からの描写は、美しく印象的にしたいのはわかるのだが、湖の透明感に対して「色気のある」という修辞を使ったのは、長年の仕事人間生活からやっと脱しようとしてるレベルの主人公が使うには叙情的すぎると思った。長年仕事に耽溺してきた人間が「あとには何も残っちゃいない」と思うのは少し嘘っぽいな、とも思った。主人公のキャラクター強度がもう少し上がりそうな千字作品だと思った。

参照用リンク: #date20210104-031941


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