第210期決勝時の、#8Rebellion(えぬじぃ)への投票です(3票)。
未来が持つ女性らしさと母性はとらえどころのない無形の髪と混ざって過ぎ去る温もりとなっている。予選の時は最初の一文が突飛で毛嫌いしてしまったが改めて読ませてもらって私もとらえどころのない未来の髪をつかもうとする者の1人であるということに思い当たった。過去が物語となり、一人称の人生に未来という結果が多面的な意味を付与する描写。今を生きる私たちもその髪に触れようとすることを少しの間許してくれる作品だった。
参照用リンク: #date20200408-135819
予選で投票した時は、すべての出来事を物語にしてしまうという過去にする暴力性ばかりに目がいったが、この作品の言いたいのはそこではないのではと、改めて読み直して思った。未来が歩みを止めたとき、過去の人間がすべて出来事として語られつくしてしまった時こそが、暴力すらもない死の世界なのではと思った。未来は自分自身をも語りながら、それでも歩みを止めることはない。その歩みはゆっくりでも早くでも、いかようにも感じられるが、決して止まることがない。それこそが生きているということだと思う。まだ終わっていないことに対して語りつくすことはできない。だから未来は物語には閉じ込められず、常にその一歩先を歩いていくのだと思う。そう思うと、その歩みに何となく乗っかっている自分もおのずと前を向けるようになるから不思議だ。
参照用リンク: #date20200404-180422
『桂馬の…』は1000字でまさに完成された作品だと思いました。表現や将棋の駒の捉え方がユーモラスで、作品のリズム感も含めて上手です。ただ、(私自身将棋にそれほど詳しくないのですが、)将棋の駒を扱うとき、とった駒を再び使えるとか、王手桂取り、という考え方自体どうなのか、とか、ルール的なところでどうなんだろう、と。あまりこだわるべきではないところかもしれませんが、作者さんもあまり詳しくないのでは、と思ったり。
『道頓堀…』は、ものすごい勢いを感じる作品で、でかつ大人っぽいと思ったのですが、私自身がその勢いについていけなかった、というのが正直なところです。
『Rebellion』は幻想的な雰囲気の作品で美しいし、短い中ですごく考えさせられる作品でした。人は「物語」の中でしか生きられない、とネガティブに考えるのか、「物語」のなかで生きることが「未来」への希望なのか、いろいろ捉えることができる作品で深いです。こういうの私は好きです。
参照用リンク: #date20200404-142659