第199期決勝時の、#52019年3月29日((あ))への投票です(5票)。
まとまりのある話で、最初から最後まで楽しく読みました。
解き明かされる謎と、そこにあることが当然のこととして、
受け入れられている謎と、謎のまま残されている謎という、
種々の謎が絡み合った雰囲気がよかったと思います。
参照用リンク: #date20190507-233121
『或る人形の物語』『2019年3月29日』、この2作品でとても迷った。
『或る人形の物語』は言葉の選び方がとても丁寧で、文体も完成度が高いのだけど、全体的にどうしても意味が掴めない。これはべつに作者の力量不足と言いたい訳ではなく、読者である僕の好みに過ぎない話なのだが、短編小説では最初の一文または一段落目までには読者を物語に引き込んでほしい。最後まで読み終えてようやく情景が掴めてくる小説は、稀に成功する場合もあるけれど、書くのはきわめて難しいと思う。
しかし『或る人形の物語』を何度か読み返してみて、実力のある書き手だと思った。「意味をもたない物語が終わる」と終わらせるのも一つの方法だが、この小説にはもうすこし、僅かでもいいので意味を足してほしい。そのためにはどこかを削らないと1000字には収まらないのが、短編小説の難しいところだ。
『2019年3月29日』は完成度があまり高くない、と書くとなんだか悪口のようで申し訳ないのだけど、力が抜けていて読みやすい、と言えばいいだろうか。タイトルが日付なのは、これはブログだと解釈したけれども、内容も小説というよりブログである。「妖精を使った暗号計算」「量子計算を三日間回した結果」といった専門的(?)な用語を織り交ぜながらも、ブログゆえに詳細な説明は省かれる。そして謎の食べ物「ぽこぽこ」についても語られない。1000字の字数制限が良い方向に働いている。
『仮想狂気』については、これはどう捉えていいのか分からない。タイトルのとおり「狂気」について語ったのだとしても、狂気をそのまま曝け出すだけでは小説としてはやや辛い。誰が語っているのか、誰について語っているのか、判然としなかった。文体を破綻させなくとも狂気を描き出すことはできるので、今後に期待したい。
参照用リンク: #date20190501-213816
「顕微鏡で薄い雲母を観察したときのようだった。」
唯一出てくるこの比喩が印象に残るくらい、情報に満ちた作品。
参照用リンク: #date20190501-212725
予選と同じく(あ)さんの「2019年3月29日」に投票します。
物語の展開力、あとは好みで選びます。
たなかなつみさんの「或る人形の物語」は、字列・イメージが綺麗な作品でした。このタイトルの「物語」とは、物語ではない、意味を持たない物語。「星明りの下」とあるように、星空と、スターダストのようなイメージが形になる前に崩れる様子を描いた作品でした。僕もその色のイメージで書いたことがあったけれど。1000字という制約のなかで、どこまで行けるか、展開を描いたものが好みです。
また、「残らない」話より「何か残る」話が読みたい。やはりせっかく読むのなら、作者のイメージよりも読後にポジティブな気持ちになれる作品が読みたい。今期のなかではほかに「危ないことは分かってる」が残らない作品に挙げられますが、「2019年3月29日」は残る作品なんですよね。これも好み。
そういうことを述べるならば、「仮想狂気」も残るものを書けていたのかな。客観的に読んでみて、残るとしても、それははっきりしないもののように思う。自分のだから投票の対象外。クロクマ
参照用リンク: #date20190501-130003