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第180期予選時の、#3第二幕(岩西 健治)への投票です(1票)。

2017年9月30日 17時17分22秒

前半は映画かドラマの撮影の場面で、後半は映画やドラマとは違う現実の場面。しかし主人公は、どちらの場面でも基本的には観察をするだけである。とはいっても、後半はちょっとした事故を傍観している自分に対して主人公は罪悪感を覚えている様子なので、ただ観察をしているのとも違う。ただの観察者の立場から、事故の当事者や状況が発する引力のようなものによって心理的に引きずり込まれている。事故で倒れた人を助けられない主人公は情けない人物だとは思うが、そのことがかえって人間ぽさを表現している。
それからこの作品は、読者を物語の中に巻き込むような仕掛けになっていると思う。物語の中に出てくる主人公にとっては、前半はフィクションで後半は現実という構成になっているが、この物語を読んでいる読者にとってはどちらもフィクションでしかない。しかしこの物語を読み終えた後、読者は再び現実の世界に戻るのだから、本当は読者も主人公と同じ立場なのだということにふと気づかされてしまう。物語の主人公はフィクションと現実の切り替えが上手くできなかったようだが、果たして自分にはそれが上手くできるのかなと少し考えてしまった。
作品の出来については、読みやすくはあるが、解釈を読者に委ねている度合いが大きいという印象。もう少し読者との対話(読者がどう読むかという想像)が欲しいところ。しかし、読んでいて考えさせられる部分が多いのは自分的にはプラスだった。(euReka)

参照用リンク: #date20170930-171722


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