投票参照

第171期決勝時の、#8夜のむこう側へ(塩むすび)への投票です(3票)。

2017年1月8日 21時31分47秒

#6
母親の「かき氷」の提案とか、それに同調しかける姉とか、失踪した義兄と依存関係にある女性とか、誰も彼も歪んでいる。語り手は「かき氷」の案を「獰猛」とするが、読者の私からすれば彼の選んだ結末の「うめた」は全てを絶っているように思える。ただ、その拒絶は否定ではなくむしろ肯定的に見えた。
例えばこの感想も異物に対する抵抗だ。読みながら、関係とは基本的に互いの排除なのだなと思った。
語りの表現から人物のいびつさを浮き彫りにし物語の深みを与える、という点で技巧的に優れていると思う。

#2
個人的に最も好み。散り散りになりそうな文章だが、読者を迷わせることで閉じている。絶妙なバランス感覚。それゆえの字数の少なさなのかなと思った。強くはないけれどじわじわと印象深い。三作品中で、夜道を歩きながらふと思い出すのはこれだろう。
我が儘を言えば、残り字数でもう一捻りほしい。

#8
語り手は母親を殺したのだろうか?
初読時は陰鬱とした幻想描写に目を奪われてしまったが、再読して「夜のむこう側へ行く」=自死の選択と読めて一気に冷めてしまった。つまりこれは死に場所を求めて彷徨う話かと。するとどうも幻想が美化に感じられ、途端に物語が浅くなる。死を美化するならば読んでるこっちを殺す勢いでとことん蠱惑的に描いてほしいし、そうでなければ排他的に描いてほしい。一方で「こんな気味が悪いものはなんだか違う」というひどく感覚的な理由で死を避けるのは妙に説得力があってよかった。
あとは予選でも書いたが重なる何人もの母の映像は鮮烈だった。

今期は珍しく予選投票三作品が全て決勝に残ったので本当に悩んだ。完成度、好みの作風をおいて、粗さを残しつつも鮮烈なイメージで驚きをくれた#8に票を投じる。

参照用リンク: #date20170108-213147

2017年1月7日 6時56分48秒

1月2日の自分の体験で恐縮ですが、洗面所の前で胃液を何度も唾の様に出していたのを思い出しました。本格的な嘔吐とはならず、つばに類似の胃液だったのを覚えています。この作品では、生老病死などからくる仏教的な、宗教的なものに頼る潜在的なストーリーなども裏で響いて居る様な気がしました。

参照用リンク: #date20170107-065648

2017年1月4日 14時26分42秒

 静寂で「しじま」と読むことを知った。
 母は首つり自殺だと解釈した読者。二行目、「ぶら下げたコードの輪を握って目を閉じる。」の時点での母はまだ吊られた状態である。そこからの出来事は主人公の心理が作用した幻影であると解釈する。「帰宅。」とは幻影からの脱却。そこで矛盾が生じる。
「ぶら下げたコードの輪を握って目を閉じる。」とは、主人公自身の行い。自殺の瞬間、母の幻影を見る。最初の「静寂。」は最後の「静寂。」への繋がりである。だから、一行目は物語の最後である。時間帯を考える。「静寂。」とは静まりかえっていること。そして、アラームから早朝であると推察する読者。
 母が死んでいることは事実のようである。「首に掛けたコードを床に置く。」とは母への行為のようでもあるが、襖を開ける前なので、やはりこれは主人公自身の行為のようである。母が死んだから自分も死ぬ。とは考えにくい。「夜のむこう」とは「夢」のことであり、夢オチを見せない夢の出来事であるとの解釈もできる。
「帰宅。」からの段落がはじまりで、「ぶら下げたコードの輪を握って目を閉じる。」へと流れる。次に「携帯は暗闇を白く切り抜いたまま震えている。」がきて、最後と最初の「静寂。」へと落ちる。
 第一印象を大切にしよう。「冷蔵庫」はうさん臭さ、「待ち合わせ」は最後の一押し(文字数に余裕があるから)を感じる。

参照用リンク: #date20170104-142642


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