第167期予選時の、#9風よ水よ人よ(qbc)への投票です(2票)。
前半はよくある話というか、導入部になるわけだが、後半になって話のアクセルがぐっと踏み込まれていく。あるいは「風よ水よ人よ」と後輩の嫁が言ったところで、新しい世界が展開し始める。そして「一緒に言いましょう」「構わんよ」のところで、〈後輩の嫁〉と自分という微妙な男女の距離感を超えて、不思議な一体感が生まれる。だからどうなるというわけでもないだろうが、一瞬でも新しい世界(新しい「風」)を感じられるのは、人生の中で救いになるなと思った。(euReka)
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ナチュラルな感じがして、それでいて「俺」と「後輩の嫁」の少し危うい関係性も読み取れる。そこから世界が誕生するかのような「風よ水よ人よ」という言葉の響きが何気ない風景にアクセントを与えている。作者は「言葉」を単なる「会話」としてではなく「記号」として扱うことに長けている。
生命としてあるべき姿、その第一は子孫を残すこと。「俺」ではなく「後輩」はそれをやってのけた。しかし、子供は死んだ。「風よ水よ人よ」とは一種、鎮魂歌のようでもある。
文字として書かれていない部分に読者が何を読み取るのか、それが作者の意図することでなかったとしても、その1000文字から先の世界が表現されているかが良い小説の条件のひとつであると感じた。「風よ水よ人よ」実際にある銘柄を出したのは評価できる。
参照用リンク: #date20160816-210042