第166期予選時の、#1煮る(わら)への投票です(1票)。
『考えても詮ないことばかりが鍋の底から泡となって沸き上がる。
沸騰する鍋をしばし見つめる。ぼーっとするのは苦手なのだが、湯が目に見えて減る程度には放心していた』
この話は日記をちぎりまくって鍋で煮る人物の描写なわけだけども、最初のこの一文にはなにかものすごく共鳴するものがあってそれはなんだろうとしばらく考えてみた。
ひょっとして、作者はこの1000字小説を投稿するにあたり、『なにもかくことがない』状態だったのではないか? そして、なにもかくことがない自分をみつめていくうえで、心のなかに鍋がみえてきたのではないだろうか。
以下につづく詳細な描写には、なんというかこの一文がもつ熱源を絶やしてしまわないように必死に温度をあげていこうとする努力のようなものをかんじてしまう。小説としてどうこうというより、この話の設立過程に共感するし、なんというか、作為のない話である。
ジャズを聴いているような小説を読ませてもらった。
参照用リンク: #date20160731-225336