第159期予選時の、#3彼の娘のユートピア(ゐつぺゐ)への投票です(3票)。
「銀に光る」
読後に、青春の幻影の香りがした。自分自身も高校生の時に写真部であった為か、現像室の暗室の妖しさが懐かしく迫る。そういえば、私の初体験も、現像室の暗室のオレンジ色の光の中だったな……。
「危険な薬」
人間の好奇心というものを良く表していると思う。「少しだけなら」ということで、何度も繰り返し、泥沼にはまる姿が、滑稽であり、そしてリアルに迫る。
「彼の娘のユートピア」
耳垢は、確かにない方が良い。百害一理無しのように思う。でも、そんな耳垢を排除しないで、ちゃんと意味を見出し、愛し、尊重できる世界。人間に当てはめてもそれは同じだと思う。お互いの価値を尊重する。それがユートピア。タイトル、「彼の娘」とは、「彼岸」とか「彼方」の「彼」であったか……。
「雪天使」
雪=天使の羽、という、詩的なイメージ。美しいが、中谷宇吉郎博士の『雪の結晶は天から送られた手紙である』という言葉を越える新鮮みがあるのか、という疑問が頭を過ぎってしまった。
「遠い空の下で」
生きていく中で、何か大切な何かを失ったのではないかという想い。選択した後に、時間が巻き戻されでもしない限り取り返せないのだけど、何故か後悔してしまう。分かる。
「静かなる演説」
後半に頻発する誤字や「彼らは独裁者を、確かに求めているみたいである。」という奇妙な言い回し。きっと、独裁者による独裁を否定していて、それを肯定する人々に疑問を投げかけているのだろう。
「魚の骨」
とても伝わる。だけど、「心臓の上に傷跡」が残るきっかけを書いて欲しかった。何かの重病とその治療の後であろう。きっとその治療の時にドラマがあったのだと思う。「意外と愛しい。」と思える背景が知りたい。
「霊感テスト」
「犬を連れたシルエット」が奇妙だ。しかし、この語り手がもっと奇妙。恐い。使ったパッチの数を数えてみよう。ああ、恐い。
「青巻き」
私の地元では、薩摩揚げとして、蒲鉾を揚げていた。青い蒲鉾もあるんだぁ。いろいろと不思議。
全部の感想を書けませんでしたが、全て読んでみて、「彼の娘のユートピア」が一番好き。
参照用リンク: #date20151228-210050