投票参照

第152期決勝時の、#9盲管銃創(キリハラ)への投票です(1票)。

2015年6月7日 20時8分20秒

少し前に掲示板であがった話題ですが、私は311を主題とした作品や何でも311に絡める読み方が嫌いです。それはただわかりやすい形をしているだけで、個人にとっての失恋や死別あるいは誕生や結婚といった出来事と本質的に変わらない。逆に言えば311を通じて普遍を描こうとするなら評価したいと私は考えます(そうすると311である必要はない)。
あえて穿った見方をすると、本作は311以後の作品として読めます。ただ311そのものにウェイトが置かれていない。以前以後、現在過去未来、そこから時代に視野を広げ、「貴様の今も、いずれ古き良きものに変わる。」「一度撃ち込まれた銃弾は二度と抜けないが、誰しも痛みと恐怖は抱えざるを得ない。」と語らせる。私はここに普遍を見ます。鋭く切って捨てる小気味良い語り口、諦念とともに拾い上げる最終段落、最初はその語り手の正体ばかり気になってしまいましたが、作品の主題からいってもこの視点の置きどころは巧いなあと思わされました。
ちょっと分かりにくく、カタルシスが弱い点がネック。とはいえ他作品もそれほど強くなく、逆にその読みやすさ分かりやすさゆえに深く残らないようにも感じました。スルメのように噛めば噛むほど味が出る本作に一票。

参照用リンク: #date20150607-200820


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