第144期予選時の、#1少し濃い夜(志島洲)への投票です(3票)。
視点と文章の運びが冷静。鍵のくだりは思わずあるあるって笑ってしまった。ぐだぐだと心中を吐露して終わってしまうのではなく、最後の一文で「濃い夜」にぐっと引きしめるのがうまい。それから「ああ、ビールが飲みたい」もポイント高くて、その前ふりがあることで「息苦しい」と終わっているにもかかわらず読み手は読後にビール飲んだ爽やかさを感じてしまう。バランス感覚がいいと思います。
参照用リンク: #date20140928-222417
行間で語るのが上手い。「発泡酒の缶をペコリと潰した」で、私の頭に、350mlではなく500mlの長い缶ビールが頭に浮かんだ。「高校生の時の彼女で童貞を喪失した、彼のことを。」で、主人公の初めてはこの彼であったのだと、何故か確信した。繰り返しになるが、行間で読ませるのが上手い。
余談だが、ハルカトミユキというバンドでも活躍しているらしい福島遙の『空中で平泳ぎ』という歌集に収録されている「夏行きの夜汽車に乗っていることの不思議をひとまず恋としておく」という和歌?を、この短編を読んで思い出し、物語の余韻が二重に響き、少し、こい、昔、を思い出した。
余談が長くなったが、素晴らしい作品なので一票。
参照用リンク: #date20140913-020756