投票参照

第126期決勝時の、#7ツメクサ(qbc)への投票です(1票)。

2013年4月6日 4時30分50秒

#9 ないものねだり
題材としてはさして新鮮味はないと思う。ただ見せ方や切り口が巧い。以前どなたかが仰っていたけれど、何を見せるかではなくどう見せるかが大事、というのを改めて感じた。特に、読点を多く用いることで生み出されている、浮遊感あふれる雰囲気が、シュールな内容とマッチしていて、とても効果的だと思う(とか、意味もなく真似てみたり)。
その上で難癖をつけるとすれば、ラストが「不思議。」で終わるのはどうも肩透かしな感が否めない。大したことは何も起こらないけれど少し不思議、そのふわっとした感じがいい、というのは分からなくもないけれど、私にはオチをつけることから逃げているように見え、とてももやっとした。

#10 反面教師の白い夢
予選時に票を入れようか迷ったのが、これと#8の「迷子」だった。どちらも終盤の展開で注意を引きつけられる面白い作品だったが、散々迷った挙句、どちらにも投じなかった。
「反面教師の白い夢」は、前半部分にほとんど感情移入ができないことが問題なのではないかと思う。例えば憎しみを表現するのに必要なのは「憎しみ」という言葉でもその理由でもなく、どう憎いのかという描写ではないだろうか。その憎しみが強く感じられれば、逆転としての「母親の指を見るために生きてきた」という語り手の感情が活かされてくるのではないか。
どちらかというと灰をトイレに流すという行為の滑稽さばかりが目立ってしまい、でも滑稽さがメインテーマではないよな、と思ってしまった。

#3 ウィーンで狂うということ
楽しかった。私は「ただ乗り込むだけでは面白くないからと、サーカス団として乗り込んできた。」がツボだった。終盤が弱く感じられるのが残念。勢いよく、どかんと一発でかい衝撃を食らわせてほしい。

#7 ツメクサ
共感ではなく嫌悪感や反発、断絶によって読み手の感情を揺さぶり、ずるずると引き出していく手法は本当に巧いし正直恐ろしいと思う。
「おまえは一生あの暮らしの中で死んでゆく。」からの終盤の流れは見事と言うほかない。突き放され、打ちのめされた。

というわけで今期は最も衝撃の大きかった「ツメクサ」に。

参照用リンク: #date20130406-043050


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