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第122期決勝時の、#13地面の無い僕達は達観する(豆一目)への投票です(1票)。

2012年12月8日 17時32分17秒

「地面の無い僕達は達観する」
→小さいころ、自分が手にしている覚えたての概念を色んなものにかざして、「これはそうだ」「これはちがう」と真剣に分類というか、評価というか識別というか、研究じみたことをしていた、というのを思い出した所為もあり、知っていることも少ないし理解も浅い、けれど至極切実に物を考えている主人公にとても良い印象を受けた。「僕は(僕たちは)〜した」というのが各段落の最後に必ず出てくるが、これは上のように生きている少年の、自分が存在していることを切実に訴えている声にも思える。したがって、一人称のお話としては主人公の性質と文章がよく馴染んでいるように感じられ読み心地も良かった。以上の点を主な理由として今回は選ばせていただいた。

「ゆべしとねこ」
→内容がとても可愛らしい。それを語る文章が淡々としている分、むしろ温かさを感じた。ただ、可愛い子供がどこかからやって来て、可愛いから適当に可愛がって、どこかへ行くようだったから見送った、というだけのような感じ、お話の外縁を撫でるだけの印象だった。カタルシスも強い衝撃もその先の物語を想うワクワク感もちょっと持てなかった。

「願い」
→胸糞悪さが良い(笑)。兄が「消えたい」と嘆いているのを知っても兄に同情をしなかった主人公の兄の大切さなど微塵も感じさせない徹底的に冷徹な姿勢を見出した気がする。実際にいる兄のような人間の絶望的な自意識を映し出したようでもある。ただ、最後に主人公が抱いた疑問が、主人公をどこへ連れていくのかが不明瞭で消化不良だった。兄に対する記憶の未風化が主人公の無意識上の何かを仮に象徴しているのであれば、それを文章の中で匂わせてほしいとも思う。

「イン・ザ・タッパー」
→凡人だけど真摯な主人公、夢想家の相川君、理知的で相川君に前世は姫だと思われている川崎さん、どのひとも魅力的だと思った。だが、衛生面を気にすることとプロテニスプレイヤーであることは排他的な事柄ではないと思うし、相川君の話に主人公を混ぜ込ませたところで、主人公が川崎さんに魚のことを聞くチャンスが得られるようになるとも思えない。ということを考えると、ちょっと全体が胡散臭く感じられてしまった。

「夜とショッピングモール」
→あくまで平和な日常なのだな、と後半部でなぜか酷く安心した。その後で、日常の中だからこそ前半部のような夢に浸れるのだな、と感じた。で、安心して夢に浸れるような日常を形作っているのは彼女の存在なのだな、と微笑ましくなった。決して悪くはないと思う。

「猫」
→展開の衝撃さが目立つ。「猫」が考えていることの盲目的な性質は、必然的なものだったのだろう。憐れという言葉が似合うと思った。「猫」が潰れた目で警官を睨むシーンは想像してみるとなかなか迫力があった。が、潰れた目で何も見えないはずの女が瞬時に警察突入の状況を把握できてしまうのはなんだかなぁ、という感想も抱いた。

参照用リンク: #date20121208-173217


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