投票参照

第121期決勝時の、#2しらねえよ(藤舟)への投票です(2票)。

2012年11月8日 20時18分8秒

予選のときは拒否反応を示して流してしまいましたが再読して驚きました。まんまとひっかかったというか。読めば読むほど周到で、タイトルと末尾の「しらねえよ」の気持ち悪さが際立つ。語り手とおっさんの間、語り手と読者の間の二つの断絶があって、両方が最後の一言に集約されている。あと拒絶される側の視点で書かれているのが新鮮でした。読み落としたことを反省しつつ一票。

参照用リンク: #date20121108-201808

2012年11月3日 0時19分12秒

2 しらねえよ
なんだろうすごく悲しい。ふだん感情移入なんてしない質なんだけど、すごくしちゃいました。おじさんの方にね。
というのも、某HIPHOPアーティストがパーソナリティを務めているラジオ番組で映画監督の三宅隆太氏がかつて『蟹と修造』理論なるものについて話していた。これ、映画脚本リライトの手本の一つだというがとんでもない。理論の何たるかはググってもらうとして、小説にとっても重要な技法、つまるところ感情移入を逆手にとった演出なのである。
恒川光太郎氏の『夜市』を選考委員の高橋克彦氏が評したときに“発想の転換”なる言われ方をしていて、未熟な読解力をぶら下げていったいどういうことなのかと頭をひねらせたあげく、つまり感情移入の操作なのだと合点したことがある。で、それはいいんだけど、本作のそれらを地で行く結構には軽く唸った次第。おうぇ、って。
読点の問題、リーダの問題、平常であれば「はいこれだめなパターン」と一蹴するのだけど、今回は逆にこの卒のアリアリ感が誰かが酒を呑む代わりに誰かが涙を飲まずにはいられない社会の構造とやらに一役買っているよう。なぜかって言えば、悔しいっなんなのお前、なんで俺がこんなんでお前そんなんなのっ、なんなのっ、マジどういうことっ!?て気持ちになれたから。
別にそれは訳ワカラン作品ばっかりですっかり波に乗り遅れた昨今の拙作事情を引き合いに出しているわけではなくて、もっと本質的な話。
よくよく考えれば読み慣れた骨子なんだけど、耳障りな独り語りで巧くカムフラージュされていて、もしもっとガチっと文体を嵌めこんでいたらこの効果は起きなかったはず。作為なのかどうかはともかくとして、うるせぇこととムカつくことに一票。それが本望でしょう。


14 トカゲ
悪くない。小道具ならぬ小細工(指のくだりとか)もしっかりしていて瑕疵はなさそうに見える。ただ最後の
 トカゲさん、あなた、私のお母さんですか?
というのがいまいち。一見、ぴたりと収まっているように思えるけどことばが常套過ぎるのか心情が入ってこない。中盤の父が喜ぶあたりとかはなかなか味があるけどやっぱり締りが悪い。良すぎて悪い。
蛇足ながら急性心不全って言葉には私的な事情があってそれだけでメランコリィなきもちになるってのもある。

18 巨人について(not yomiuri giants)
これも悪くない。
海に浸かった出で立ちってのがやっぱりゴジラとか、サンダとガイラとか、そこら辺を思い出さずにはいられないってのが苦悶の種。わが善き苦悶。
強大な力を前に団結を……とか言うとまんまオジマンディアスだなーとか考えるんだけど、そうこうしてる間に「嫌ですね」で終わるもんだから更になんだかなぁと。
117期の拙作で、“悲劇”を目の前にして屈することと抗うことの狭間でどよどよみたいなことしか書けなかった自分からしても、他人行儀が過ぎるというか、序盤からあからさまに皮肉が続いているなかで最後もこう落ちてしまうと、あぁん結局おまえも口だけなんだろで片付いてしまうと思うんですね。じゃあこれがもし「世界はこうあってほしいですね」で終わったら納得するの、て訊かれるとうーーんと唸り出して思考回路爆発するんでもうなんでもいいです。好みです。嫌ですね。(楡井)

参照用リンク: #date20121103-001912


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