第110期決勝時の、#8窓の霜が融けるまで(霧野楢人)への投票です(6票)。
♯8
文章はとても読みやすいと思いますが、全体的に意志が弱いというか、表現が消極的過ぎてメリハリに欠けるようか気がします。それから、文中に出てくる「なぜなのか、自分ではよくわからない」という箇所は納得いきませんね。むしろ我々は「なぜなのか、自分ではよくわからない」気持ちを、なんとか言葉で表現したいからこそ、小説なんていう面倒くさいものを書いているんじゃないかと私は思いますけどね。
♯15
発想はとても面白いと思うのですが、「猫力」という一つのテーマに縛られ過ぎているような気がします。猫は気まぐれな動物なのですから、テーマとは全然関係のない場所に寄り道するとか、無駄に文字数を使うとか、もっと余裕を持った構成にすれば、もっと面白くなるんじゃないかなあと思います。
♯16
私の書いた小説なのですが、改めて読み返すと、段落から段落へ進むときのリズムが悪いし、会話文の反復が多いので、リズム感には特に気を付けるべきだと思います。あと、「放射能」という言葉を連発するということは、言葉の暴力以外の何物でもないと思いますし、誠実な表現とはこれでよいのかと、地獄の入り口みたいな場所でウジウジしています。がんばれ、私。
参照用リンク: #date20111203-181122
「窓の霜が融けるまで」
丁寧な描写がいい。細かく言えば文章にいくつかひっかかる点はあるが、全体的にみれば流れるように読めるのもよかった。
何気ない場面を退屈させずにみせられる技術は評価したい。
「ねこぢから」
悪くはないのだが、猫力にまったく共感できない人間からすると説得力を感じられないのが難点。
共感できない人をもねじ伏せるようなパワーが欲しかった。
「質問」
3.11以前なら評価しただろうが、今は正直こういうテーマは食傷気味。
ありがちな主題をひっくり返すなにかがないと厳しい。
参照用リンク: #date20111203-090126