第100期決勝時の、#10うたかた(三浦)への投票です(3票)。
予選から一押しなんで、この作品に。
こういう作品でこれだけの触感があるというのは素晴らしいと思う。特に冒頭、「冬の朝のように張り詰めた暗黒に、それだけ生白い幼い両腕が伸びていて、影でしかないわたしはその子を胸に抱き上げた。目を覚ますと、夢の中の子が、わたしの胸の上で深い眠りに落ちていた。」この、生白い幼い両腕がわたしに向かって伸びているさまなど子供のありようが目に浮かぶ。夢の中の子が胸の上で深い眠りに落ちている、など寝姿が実に乳児で、すごい冒頭だと思った。この一行にここまでリアルな触感を覚えるのは、私が赤子を二人育てたからかも知れないけども、それだけでなく、この作品を貫く何かが私を捉えて離さない。
こういった類の小説にはある一定のリアリティがないと、書いた側が気持ちいいだけの小説になりがちだが、実のある味わい深い作品だと思う。そしてラストの着地点も素晴らしい。その寂しさみたいなものがまるで私のもののように感じられた。そういう作品は数少ない。記念すべき100期に読めて良かった。
参照用リンク: #date20110207-201914
「十四歳」は別の方だったのですね。ふーむ。決勝に残った作品は、どれも良作ですが、改めて読むと「うたかた」が秀逸。終わり方も良いし、不思議な世界観も素敵でした。
参照用リンク: #date20110201-074559