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第三弾。冗長で読みづらいとか、こんなの違うとかお思いの方は、遠慮なくとばしてくださいませ。


7 宝の部屋 鳩さん 1000

 表現は荒くて、やや読みづらさを感じる。しかしまっすぐな物語である。心の飢えを満たすために人は何かを為そうとし、その結果を収集しようとするのだけれど、実はそれは全く解決にはならない。根底にある存在性そのものに不安があるわけだから。ラストがスパムメールかも知れない女の子からの誘い文句であり、それでも「今日は安らかに眠れそうだ」ということが、主人公の心理をぴったり物語っていると思う。

 ミサイルだか隕石だかは主人公の家だけを壊したはずはないと思うのだが、それでも独りを貫くというのは以外に強い人なのではないかとか、余計なことを思ったりする。皆が等しく危機的状況に陥ったとき、彼は不特定多数の周囲と感情を共有でき、断裂した関係を回復する、かもしれないしそうでないかもしれない。


8 4minutes silence 公文力さん 1000

> 「私には何とも言えません。でもあの時の友達の顔がまるで彼自身ではなかったということが先日の私ではない私自身の姿に符号しているようで奇妙なのです」

 他のところは読点が無くても読めたけれどここだけ意味を掴みづらかった。ここで話の流れを確認するために脳内でストップがかかってしまったからだ。「私」はかつて継続的に薬を飲んでいたわけだから、一度だけ薬を飲んだ友達に起こったことを薬のせいとすることに無理があるのではないか、と解釈してしまった。
 では無理であることを知っていてそれを前提に物語を構成しているとすれば、四分間の沈黙と、その後のため息とは何だったのか。精神科医は「私」の薬についての語りを、関係妄想あるいは加害妄想であると診断しており、煙草によって落ち着いた後に「私」にどのように切り出していくかを考えていて、それで「溜息」だったのではないか。その「精神科医が(吐いた)長い溜息」を「性交の後の心地よい柔らかな風に似ている」と表現した(その繋がりは掴みづらかった)「私」は、医師のため息をどう思っているのか。いくつかの解釈が可能なように思えるし、この後いっそ、「私」にとっての真実である、薬に起因する加害行為に手を染めてもかまわないのだろう。灰皿がいい感じだし。

 いずれにしても、この物語が意味を持つとすればそれは何なのか、ということについては、私の経験からは何も語ることができない。


9 とある日常 fengshuangさん 720

 こういう上司のキャラはわりと好きで、しかも時計の針が全部左半分というセンスもわりと好きである。
 「六時四十五分五十秒」「固定電話にかけた上司」「新車の上司と会社までドライブ」については、タイトルどおり日常であるとも取れるし、非日常であるとも取れる。上司が「脳を開けてみたい」と思わせるような些か特殊な感覚の方らしいので、そういう上司であればそれもまた日常なのであろう。しかし。もしも。上司が脳内電波でかけてきても、マフラー巻いて星に乗って現れても、「この人の行動だったらしかたがない」の一言で全てを「とある日常」にしてしまえるとすれば、それはとても恐ろしいことだ。何を書いても日常。創作作家は雁首揃えて食いっぱぐれることになるだろう。

 ところで私が生まれたのが某年某月某日六時四十五分らしいけれど、私は覚えていない。私も脳を開けてみたい。そこから携帯電話でない固定電話にでんぱを飛ばして、朝早くから新しい車に同僚を乗せて会社までドライブする。そんな日常も結構素敵だと私は思うけれど、同僚はこの主人公のように寛容ではないから、多分私を警察に通報すると思う。

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