ということで真夜中直前の零下のなか歩いている。彼女の手袋は毛糸のふかふかで、おれの右手は素手だがふかふかに包まれてかなりぬくい。もうすぐクリスマスが近いがための素手アピールなのだが、これはこれで、ひと冬越してしまえそうなほどに満足、じゃなくて満手か。まんて。語感がえろいな。いや、満足=まんぞくの法則でいくと、まんじゅか。えろいのはおれだった。
今朝から降り続いてる雪はもっさもっさと積もり積もって、その上、道往く人々に踏み固められかっちかちの氷一歩手前であり、ひどく滑る。スニーカーのおれは無様に転ばないようアシモみたく歩く。
「アシモ」と彼女は笑う。
彼女にわかってもらえておれは嬉しい。しかしアシモ疲れ。こんな歩き方ムーンウォーク以来とおれは思う。
人は悲しいくらい滑るいきもの。
「わたし、車の免許とるね」
「それ去年も言ってた」
「来年はもう言わない」
来年はもう、とか、深読みしたら悲しくなるので、しない。
気を取り直して隣を見れば決意の横顔である。そうだ、おれは彼女の横顔が好きなのだ。横から見ると睫毛がめちゃめちゃ長いのがよくわかる。雪が乗っかっている。「おれは歩くの好きだよ」
そう?。
と言われたらこれ以上二の句につまってしまう。
素直に君と歩く事が好きと表明できない。
もっととおくまでいっしょにいけたらねえうれしくてそれだ
そんな気持ちを知ってか知らずか
カマトトイケズ
ずっといっしょ はずっといっしょにはいられない だし
人は悲しいくらい滑る生き物
ドラフト らいくあローりんぐ どらふてぃんぐ
結局滑らない話でなくドリフの大爆笑を借りて
一緒に滑ろう
え?