# 題名 作者 文字数
1 着席権 森 綾乃 1000
良かった。静かな文章の背後でちらちら見える苛虐がセクシー。
2 とある学者の奇妙な冒険 アンデッド 953
えー。「ミニショートショート」なの。
いちいち文章につっかかるんだけど、たとえばミニショートショートっていうのも気になって、冗語じゃないかこれは。ショートショートでもいいんじゃないだろうかと思う。
あと「円形の小さな窓の外では、赤砂の景観がどこまでも広がっていた。」みたいな安易な書き方も気になる。二時間テレビドラマ風の量産型記述であって、それでも二時間ドラマが作品として成立するのは俳優とかのおかげじゃないかね。これがよく知るキャラクターの出てくる小説だったらこれでもいいんだろうけどなと思う。
3 流星群 A- 1000
「ん……」がいやらしいな。いいお話だった。
4 存在感 曖昧 443
「僕は本当にヤな奴だ。」って懺悔文みたいでなんか読んでて落ち込んだ。
作文と小説の違いが何かって言うと、たぶん「作文は読者に伝える」であって「小説は読者に経験させる」じゃないのかなとちらっと思った。
5 『死せる美術のためのサクリファイス』 石川楡井 1000
えー、いやな話だった。
6 すみれ 糸原太朗 817
ドラマチックじゃないなあ。山場がないんだと思う。
7 思い出と記憶の間 沢木月子 905
なにか、何がどうなったのかよく分からなかったんだけど、とにかく陰湿な文章のパワーを感じた。
8 四月一日 中崎 信幸 764
うお、アイディアだけ。ストーリーがない。
9 竜が飛ぶ日 彼岸堂 1000
ほとんど文体に頼らず筋書きだけで感傷を生み出そうっていうのがおもしろいかもしれない。
10 悲しみの中で見たものは ユウキ 452
小説と呼ばれるものの分かりやすいうまい書き方のひとつが、状況の細部をしっかり描くってことですが、たとえばどんな町を歩いてたのか書くだけで変わると思います。
11 見習い魔術師と猫「雨空と猫と僕と」 雪篠女 940
ああ、良いんじゃないあのかなと思った。↑で言ったことだけど、「雨」の状況をこれくらい書くと臨場感が増す。「濡れた体毛を酷く嫌そうに体を震わせていた」とか分かりやすい。こういうところの書き方が、書く人の腕だと思うし。
12 はぐるま クマの子 1000
悪くはないんだけど、小説として、こう、ここまで読者に対するプッシュを抑えていいのかなと思う。人間が、ある文章を読んだ時に、文体とストーリー、どちらに強く揺り動かされるかと言えば、人によりけりなんだが、私の感覚値ではストーリーのほうが強い。たとえばワイドショーの殺人事件。なんでストーリーが文体よりも上回って力あるかと言えば、それはひとつに、山場、意外性がつくれるから、ってところだと思う。もちろん文体だけでも山場はつくれるんだけど、ストーリーのほうがイベントを置くだけで山場をつくれるから、やりやすい。文体だとちょっと難しい。この小説は、イベントとしては電車から降りて女の子と会って電車にまた乗るだけだから、印象が薄い。そして文体はほぼ一様。「サカー。ロリポップ。それは君のだろう? 僕はもらえないよ。」って空行でくくったところくらい、文体でなんとかしようとしているのは。
丁寧で詳細な描写10行よりも、事件2字のほうが強い。妊娠して堕胎するのにたどり着いた経緯を書きこむよりも、「堕胎」の2字のほうがインパクトがある場合もある。そして、そういう2字でインパクトの生まれる流れをつくる。この1,000字って範囲では。
私は動詞が読者に与える力を信じています。百の形容詞、副詞、名詞よりも動詞は強い。そして英語で言うbe動詞よりも一般動詞のほうが強い。どんな修飾よりも動詞が勝る。これは私の経験と感覚の中での正解ですが、たぶん数十年変わらないと思う。
そして、足す、引く、増やす、減らす、変える、ってアイディアフレームワークがあるのですが、「増やす」を使って電車に乗り降りする回数を増やしてもいいし、「足す」で出会う少女を一億人くらいにしてもいい。飽くなき改善への追求がまばゆい世界への出会いへと繋がってゆくのだろう、と掲示板の発言を読んだ上で、思いました。
13 蹴られた背中 おひるねX 999
なんか将来的にすごい気持の悪いストーリーのわるい独自性の強いお話を書いてしまう可能性は感じる。でもまだこちらを楽しませてくれる、って感じではない。独りよがり。
たぶん、読者が何をよろこぶんだろう、ってことを前提として書いてないからじゃないのだろうか。たいせつなのは、こちらがどんなに夢中に書いたとしても読者も夢中になってくれるだろう、ってストーリーなりテーマを見つけてくることじゃないだろうか。
14 結婚式のスピーチ 朝野十字 1000
ドバドバ。
15 青春 金武むちむち宗基 860
完全に日記。
16 おんなじ毎日 高階あずり 998
ん? 最後になんで「贅沢してえな」が勝ち誇ったようなニュアンスになるんだろうか。
17 男は風船を毎日作っている 宇加谷 研一郎 1000
これなんか面白いな。ばたばたした感じがしていい。
18 ヂアディクト 高橋唯 998
あー、これもいいな。こういう読者に自由度を許してくれるのが楽しい。ただ、おじさんと比べて幼女の描写が活き活きしてない感じ。お姉さんもあんまり。
19 ひなどり わら 1000
自然主義!
20 曇天 のい 656
あっさり。
21 あのとき euReka 991
うーん、センチメンタル。
23 儀式 多崎籤 1000
わかった。
24 アルタイルの扇 えぬじぃ 1000
32年ぶり!
1、11、17、18あたりからかなあ。